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愉快彩夢世界-ユカイロドリームワールド-  作者: 天木蘭
事故物件と壊し屋さん
9/12

暗い夜と白い手

俺と頼人は行きも帰りも徒歩だった。自転車は黒い家の中まで持って行く気がなかったし、外に置いておくと補導されるかもって思ったからだ。


「じゃあ、ここでお別れだな。また夏休みになんか誘うから」

「……うん」


俺と頼人は大きな橋の手前で立ち止まった。家の方角的に、ここから俺は橋を登って、途中で河川敷の方に向かう。頼人はこのまま橋は使わず、真っ直ぐに道を進む事になる。


「そんな寂しそうにすんなって。まあ、心霊現象に遭ったんだから、怖いのもわかるけどよ。家まで送るか?」

「いや、違う。ただ……やっぱ、辞めとく」

「そっか。まあ、取り憑かれてる俺の方が怖いしな」


クロカヤさんの言った事が本当だったら、俺には誰かが取り憑いているのだ。いや、人なのかもわからない。でも、ペットを飼った事はない。


「じゃあね、晴斗」

「おう。じゃあな、頼人」


俺の言った事を無視した感じで、頼人が手を振った。別に気にならなかったから、俺も手を振り返して、橋を登る事にした。


街灯が蜘蛛の巣を照らして、時折通る車の音が静かさを紛らわせる。虫の声も、川の音も、砂利を蹴る足音もする。


そういえば、今朝見た夢だと、俺はここで階段から突き落とされたんだっけ。


ふと、後ろを振り向いてみる。

けど、誰もいなかった。


あれは結局、ただの夢だったのかね。やっぱり、青春の寿命は短いぞっていう警告だったのかもしれないな。


なんだかんだ、今日は青春らしい事が一つ出来た。夏休みは長いんだ。明日からも、何をするか決めないとな。


と、そこで、足音がした。

俺以外の足音だ。


それは、歩いている俺のとは違って、走っていた。そして、近づいてきていた。


咄嗟に俺は振り向いた。顔だけじゃない。身体ごとだ。受け止める気でいた。


白い手が伸びてくる。俺は手首を掴んで止めた。

虫の声も、川の音も掻き消すような、荒い呼吸が聞こえる。


「俺を、突き落とすつもりだったのか?」


いや、きっと、そうはならなかった。走ってきて、真っ直ぐ手を伸ばすだけ。こんな無理矢理じゃ、せいぜい目の前に転ぶくらいだ。


でも、手を伸ばしてきた目的は、突き落とす為だったのかもしれない。


「どうして、こんな事したんだよ」


俺は掴んだ手首を持ち上げて、川の方を向いて視線を落とす相手の顔をまじまじと見つめる。


「教えてくれよ。頼人」


白い手の持ち主。俺を突き落とそうとした相手は、頼人だった。

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