青い牧と背後霊
「俺と頼人は、白い女を見たんすよ! 間違いないですか!?」
「その白い女ってどんな感じだったよ」
「えっと……」
家に入ってすぐに見た白い幽霊を思い返す。全体的に白くて、ボヤけた感じだったけど。
「髪は長くて、フワフワしてました。服はワンピースみたいな、ヒラヒラした感じです」
「じゃあ別人だなぁ。ここにいたのは、彼氏に振られたショックで注意散漫になってたら、階段で足を踏み外して死んだ可哀想な女だよ。とりあえず、彼氏は俺と同じ大学みたいだから、物申すつもりだけどな」
これは、どうなんだ? 俺たちが見た幽霊とは別なのか、クロカヤさんが嘘つきなのか。
「ここにいた霊って、ここに住んでいた人じゃないんですね」
迷っていると、頼人から質問が出る。俺もそこが気になってた。
「そうなるな。ここにいた幽霊がいつからいたのかはわからんけど、大学で彼氏の名前を調べればわかるか。まあ、その辺りは俺と依頼主でやっとく。アフターケアもバッチリな」
という事は、ここもいずれは、心霊スポットではなくなるってわけだ。本当かどうかは、今後のこの家次第でわかる。
「まあ、君達は大人しく帰りな。あ、酒は飲んでないよな? 俺も運転手だから飲めないし、ノンアルコール飲料もあったはずだけど」
「大丈夫です。飲んでません」
「なら良しだ。補導されん内に帰れな」
「あ、はい。そうします」
なんというか、クロカヤさんが自然な感じだから、本当に除霊されたんだって信じても良い気がした。
そんで、幽霊がいないんじゃ、もうここにいる意味もない。大人しく帰るか。
「あー、それとだ、青牧くんよぉう」
片付けを手伝う為に背を向けたクロカヤさんが、顔だけを俺の方に向けていた。
「な、なんですか?」
「君、取り憑かれてるぜ」
「え?」
さっき感じた寒気って、もしかしてそのせい? っていうか、そうだ。そもそもここに来る原因になったのって、ペンケースが勝手に落ちたからじゃん!
「まあ、無害そうだから安心して良い」
「いやでも、俺のペンケース落としたのソイツかもしれません!」
「ペンケースぅ? ……なんか、伝えたい事でもあんのかね。ダーイジョウブ。怪我はしないさあ」
クロカヤさんは、ヒラヒラと手を振って離れていった。……本当は、お酒がないと除霊が出来ないとかじゃないよな。エキストラさんも帰ってるし。
「晴斗、帰ろう。もう良くない? バズりそうな動画は撮れたし」
「お前の目的はそうだったな。……そうだな。帰るか」
クロカヤさんが話してくれないなら、いよいよやる事もない。俺たちは、黒い家から出て行く事にした。
怖かったというよりも、楽しかったみたいな、よくわからない不思議な感じだったな。
だけど、こういう普通じゃない出会いがあるのも、なんとなく青春ぽい気はした。