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第97話、対人戦

 スタスタと歩を進めて玄関前に辿り着くと、扉の向こうから気配を感じた。

 待ち伏せをしているらしいが、敵に勘づかれていては世話が無いな。

 とはいえ普通の人間であるならば、息を潜めての待ち伏せには気が付かんだろうが。


 心が戦闘に入っている今の俺には、その程度の気配の消し方では意味が無い。

 むしろ魔術や魔道具の類でも使わねば、欠片の殺意すら拾い上げる自信がある。


「馬鹿正直に扉を開ける事は無い、か!」


 力を込めてぶん殴る。玄関の扉を、ではない。その横の壁をだ。

 殴った衝撃で壁は吹き飛び、破片が待ち伏せをしてい者へ襲い掛かる。

 壁の破片と共に数人が吹き飛び、空いた穴から中へ入った。


「き、貴様! 一体何をしているのか解―――」


 叫んだ男の口上が終わる前に殴り飛ばし、目についた連中を片っ端から潰していく。

 コイツ等は既に俺に殺意を向けていた。なら話を聞く必要も無い。

 最初から俺の接近を理解して居て、俺に敵対していた自覚が有るという事だ。


 なら何をしているのか、なんてのは俺の言うべき台詞だろう。


「あ、しまった。一人は残せばよかったか」


 この場に居る全員を殴り倒した所で、そんな事を呟きながら周囲を見回す。

 既に立って者は一人もおらず、全員意識を失って倒れている。

 鎧を纏っていたから強めに殴ったが、もう少し加減すれば良かった。


 いやまあ、良いか。事情などどうでも。この奥に辿っていた気配があるからな。

 そう思い奥へと目を向けると、背後からじゃりっと音が鳴った。

 視線を向けるとそこには男が居り、室内を見回して眉間に皺を寄せた。


「うわぁ・・・本当にとんでもねえな」

『ししるいるいー』

「何だ、結局ついて来たのか。ここまで来たらもう言い訳は効かんぞ」

「解ってんよ。それでも嬢ちゃん一人行かせるよりは良い」


 ・・・馬鹿な男だ。貴様が来た所で、何の意味も無い事は解っているだろうに。

 ここまで来て怖気づいて逃げないとは、真正の馬鹿でしかないな。


「門番達はどうした」

「嬢ちゃんの二発で戦意喪失。庭で動けなくなってるよ」

『へたりこんでたー』


 追いかけて来ないならそれで良いか。じゃ後は――――――。


「貴様等、そこを動くな! 動けば即座に死ぬと思え!」


 集まって来ていた兵士共を片付けるとするか。

 兵は殆どが弓を持っており、俺に近づくつもりは無いらしい。

 俺が無言で連中に目を向けると、隊長らしき男がニヤリと笑った。


「貴様は成程噂通りの実力らしいな。だが小娘よ、隣にいる男は違うだろう。その場で伏せて手を後ろで組め。抵抗しなければ殺しはしない」


 殺しはしないか。という事は、俺に何か用が有るという事だな。

 捕まっても碌な目に遭う気がしない。殺されないだけの未来が待っている。

 だからと言って俺が動けば、隣の男が弓矢で射られると。そうか。そうするのか。


「だからどうした」

「なっ、なに!?」

「この男は勝手に俺について来ただけだ。人質としての価値など無い。殺したければ勝手に殺せば良いだろう。その間に俺はお前達を全員殺すだけだ」

「まあそうだな。俺は勝手について来ただけだ。俺を殺しても嬢ちゃんは止まらねえよ」

「なっ、しょ、正気か貴様等・・・!」


 弓兵は同士討ちをしない様に、一面方向に並んでいる。

 とはいえ全員が同じ高さでは無く、二階三階にもいる様だ。

 吹き抜けのホールを上手く使った形だな。


 しかし貴族の家とはいえ、兵をこんなに抱えているとは面白い。

 余程の大貴族か、それとも貴族位は低くとも大金持ちか。

 どちらにせよ、この程度で俺を殺せると思っているなら片腹痛い。


「正気だ。準備はもう終わったしな。凍えてくたばれ」

「なっ、ふ、吹雪!?」

「た、隊長!? 何処ですか!?」

「な、何も見えないぞ!」

「さっ、さむ・・・!」


 吹雪の魔術を使って視界を塞ぎ、そのまま寒さで連中の体温を奪う。

 兵士達の装備は悪くないが、悪くない程度の物に見える。

 つまりあの吹雪の中で戦う装備には見えない。


 このまま室内で吹雪を撒き続ければ、その内勝手に動けなくなる。


「魔術だ! かき消せ!」

「む、無理です! こ、こんな魔力量、馬鹿げてる!」

「何も解らない! 何だこの魔術!」

「人間に使える魔術じゃない!!」


 魔術師も居たらしいが、どうやらこの魔術に対応出来ないらしい。

 人間には使えない魔術か。まあ、そうだろうな。魔獣の吹雪だしな。

 それに俺は人間じゃなく化け物だ。生物兵器だ。


 そんな化け物に喧嘩を売った以上、ただで済むと思うなよ。


「た、たすけ、て・・・」

「う、うごけない・・・」

「さ、むい・・・」


 さて、まだ声が聞こえるな。何も聞こえなくなったら解除するか。


「うわぁ・・・本当にもう、何度目か解らねえけど、うわぁって言葉しか出ねぇ」

『おー、今日は僕に当たらない。良かったー』

「ちっ」

 

 男の頭に陣取ってるから、精霊を巻き添えに出来なかった。


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