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第198話、似顔絵の真相

「はぁ・・・まあ貴女に何かを強要できるとは思ってないし、山手の魔獣の魔核や素材を融通してくれるだけでも十分有難いわ。この時期は狩りに出る人間が少ないもの」

「あの寒さの中狩りに行くのは、何か目的が無ければ、余程の物好きだけだろうな」

「そうなのよねぇ・・・辺境は儲かる場所ではあるんだけど、この時期が長い事でそこまで儲けきれないのが難点よね。だからって雪の中狩りに行かせても、死ぬ可能性も大きいし」

「雪と寒さは舐めない方が良いぞ」

「逃げて来た貴女が言うと説得力がある、わねっ・・・っ・・・ふっ・・・!」


 思い出し笑いを始めやがったコイツ。本当に心の底から良い性格してやがる。

 他の連中と違ってメラネアの陰に隠れるでもなく、堂々とやるのは最早感心する。

 などと思っていると、そのメラネアが俺の肩をトントンと叩く。


「ねえ、逃げって、確か、寒かったから、帰ってきた話、だよね?」

「そうだな。その際コイツは大爆笑しやがったから、思わず手が出たんだがな」

『良い音でした!』

『嬢ちゃんに怒りで殴られて良く生きてんなー、コイツ』


 別に殺す気はなかったぞ。ちょっとムカついたからつい手が出た程度で。

 後頭部を打っていたので、治癒魔術を使わなければ不味かったかもしれないが。

 そしてそんな事が有ったというのに、未だに笑えるコイツは大物というか何というか。


 呆れと感心を込めた半眼で見つめていると、気が付いた支部長はコホンと咳払いをした。

 隣で受付嬢が心配そうに見ている。彼女も彼女で偶には怒って良いと思う。


「そういえば、魔核は良いとして、他の素材はどうしたの?」

「何も無いぞ。山に置いて来た」

「・・・嘘でしょ。全部? 全部置いて来たの!?」

「狩った魔獣を全て持ち帰ろうとしたら、数十人は居ないと運べない量だぞ。俺は魔核以外に用はなかったし、特に金にも困っていないからな。肉以外は適当に捨てて来た」

「あ~・・・強者の余裕嫌い~~~」

「そうか、俺もお前の面倒臭い所が嫌いだ」


 顔を抑えて天井を仰ぐ支部長だが、俺もお前に付き合うのは結構面倒くさい。

 領主となら一瞬で済む話なども、コイツの場合何故か無駄な時間がかかるしな。


「それに金儲けという話なら、俺に無許可で一つ金儲けをしていただろう」

「・・・何の事?」

「俺達の似顔絵だ。店舗に配っていると聞いたぞ」


 ブッズを探しに行った時、宿の店主が俺の似顔絵を持っていた。

 当時はバタバタしていて忘れていたが、問い詰めてやろうと思っていたんだ。

 だが鋭い目を向ける俺に対し、支部長は少し呆れた様な顔を見せる。


「あのねぇ、あれは仕方ないじゃない。なに、あんな物を無償で書かせて配れって言うの?」

「そうじゃない。そもそも何で配っているんだという意味だ」

「騒動を避ける為に決まってるじゃないの。一応これでも支部長ですから、貴女が面倒な事にならない様に根回しをしていたの。貴女を周知させていた方が問題は起き難くなるでしょ」

「金稼ぎの為ではない、と?」

「無いわね。売り上げは似顔絵描いた子に渡してるわよ。組合も私も一切手を付けずに全額あの子の分よ。もし儲けの為に売ってるなら、何割かでも組合に入れるわよ」


 それは随分と太っ腹な事だ。社員の儲けは会社の物とする企業が多いだろうに。

 しかしそうか、根回しと俺の存在の周知の為だけに、アレを配っていた訳か。

 となると流石に何も咎められんな。むしろ咎めようとしていたのが間違いか。


「そうか、誤解をしていた。すまなかった」

「まったくよ。これでも貴女が来てから、色々やってるのよ。まるで何もせずにボケーッとしてるみたいに思われてるみたいだけど」

「そうだな、思っていた」

「あの、私これでも支部長なんですけど? 一応偉いのよ?」

「だって俺と話している時は、一切偉そうに見えないし」

「貴女のせいでしょ!? 気に食わないと思ったら即座に殺意ばらまくの止めてくれない!?」

「断る」

「でしょうね!」


 あああああと呻きながら顔を覆い、天井を仰ぐ支部長。

 受付嬢はとメラネアは苦笑し、小人は何故か真似をして天井を仰いでいる。

 ただし周囲の男連中の目は、体を逸らした事で強調させる胸にしか行っていないな。


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