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第174話、こだいしゅ

『だから、もぐもぐ、こだい、もぐもぐ、しゅは、もぐもぐ、こだいしゅだよ、もぐもぐ』

「喋るか食うかどちらかにしろ」

『もぐもぐ・・・』

「食事に集中しろって意味じゃない!」

『もー、妹は我が儘さんだなぁ』

「俺か? 悪いのは俺なのか? 絶対に違うだろ?」


 ああくそ腹が立つ。何でコイツとの会話はこんなに面倒臭いんだ。

 適当に流せる事なら良いが、聞きたい事が有ると本当に話が進まない。


「良いから古代種とやらに付いて詳しく話せ!」

『あー! 兄のお肉ー! コリコリしてて歯ごたえが良いのにー! 妹の意地悪!』 


 肉を取り上げると今度は泣き出し、返して返してとその場で転がり始める。

 というかこの肉は別に貴様の肉じゃない。俺の狩った肉を勝手に食ってるだけだ。

 そもそも焼く為の火だって俺の魔術だろうが。労力代ぐらいよこせ。


『うう・・・兄はもう駄目だ・・・お肉が食えなくて死んじゃうんだ・・・妹よ、兄が居なくなっても強く生きるんだよ・・・がくり・・・』

「お前本当は物凄く余裕があるだろ。ふざけんなよこの野郎」


 小芝居を挟むな。その時点で本気で泣いて無いのがまるわかりなんだよ。


『もー、妹はノリが悪いなぁ。兄はもうちょっと余裕と遊び心が必要だと思います』

「余裕も遊び心も、持つにはもう少し力が要る」

『力なんて無くても、遊び心は持てるよー?』

「少なくとも、お前のとの会話には関係の無い話だろう。ほら、良いから早く話せ。肉返してやるから、古代種に関して聞かせろ」

『わーい! 妹やっぱり優しい! もぐもぐ・・・もぐもぐ、もぐもぐ』

「だから肉を食う事に集中するな!!」


 ああもう本当に話が進まない。何で俺はこんなのと真面目な会話をしてるんだ。

 余りの面倒臭さに頭を抱えた所で、精霊は追加の肉に手を伸ばした。


「お前本当に良いかげんにしろよ」

『あ、本気で怒ってる。怖いので兄は話します』

「最初からそうしろ」


 そろそろ本気で腹が立って来た所で、精霊は正座をして肉を置いた。

 コイツのこういう所本当に嫌い。本気で怒る前に行動しろよ。

 というかやっぱりわざとだよな。お前の行動全部わざとだよな。


「はぁ・・・で、古代種ってのは、何なんだ」

『古代種は古代種だよ。大昔から生きてる、半分精霊みたいな魔獣かなー』

「半分、精霊?」

『うん。普通の魔獣なら死んでるけど、半分精霊だからずっと生きてる。この山はその古代種が住んでるから、安定してる感じがするー』

「・・・どういう事だ?」


 土地の安定など、今初めて聞いた話だ。何よりも半分精霊の魔獣だと。

 余りにも訳の分からない初耳の話だらけで、首を傾げる事しか出来ない。


『この辺って物凄く不安定なんだー。だから魔獣がいっぱい増えるんだ。でもあの古代種がこの辺りを安定させてるから、今ぐらいで済んでる?』

「そいつが居なかったら、魔獣はもっと多かった、という事か?」

『多分そうー』


 まさかの新事実をいきなりぶち込んできやがった。

 この土地にそんな事情があったとは。

 となるとそいつが消えると、辺境は更に危険になるな。


 強い魔獣の魔核は欲しいが・・・殺す訳にはいかんか。

 そのせいで街が魔獣に蹂躙されたら、流石に少々寝覚めが悪い。

 しかし、だとしても何故、その古代種とやらはそんな事を。


「・・・それは、何か精霊的に意味があってやっている、のか?」

『知らなーい。兄なら放置するもん。その方が色々産まれて楽しそうだし』


 成程、別に精霊だからやっている、という訳ではないのか。

 だが態々そんな事をするのは、理由があっての事ではあるだろう。

 しかし半分精霊の魔獣か。何となく自分に近い物を感じるな。


「話は出来るのか、その魔獣」

『できるよー? 半分精霊だもん』

「精霊は全部言葉が通じるのか?」

『会話する気が有ればねー』

「・・・する気が有れば、ねえ」


 眼の前のこいつは何時も言葉自体は通じる。つまりあれでも会話する気が有ると。

 全く会話になっていないし、一方的に言葉を投げつけられている気しかしないんだが。


「そいつは、向こうに居るのか?」

『うん、そっちー。ねえ妹、兄もう食べて良い?』

「・・・はいはい。ほら」

『わーい! お肉お肉ー! でも兄はそろそろ野菜も食べたいです!』


 俺だって食いたい。けど雪の中を掘っても見つからないんだから仕方ないだろ。

 適当な葉なら見つかるが、今の所どれも不味い。ただただ草の味だ。

 栄養の偏りの類が気にはなるが、気にしていても仕方ない。


「古代種か・・・会いに行ってみるか」


 半分精霊の魔獣。自分と似た様な存在が、やはり少し気になった。


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