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第173話、精霊の力

『妹大分強くなったねー』

「・・・そうだな」


 殴り倒したトカゲ鳥の魔核を飲み込んでから、精霊の言葉に適当に答える。

 強くなった。確かに強くなった。この数日で劇的と言って良い程に。

 だが力を付ければ付ける程、安心の気持ちとはかけ離れて行く。


『でもまだ兄の方が強いけどね! ふふん!』


 胸を張ってそう告げる精霊の言葉が、どうにも嘘には感じられないせいだ。

 虚勢でも何でもなく、ただ事実を口にしている。そんな感じに見える。

 ならばこの存在は俺などよりも、遥かに化け物だという事になるだろう。


 今更な話だが、俺にはこの精霊の力の底が解らない。

 凄まじい魔力を持っている事は解る。それこそ街を滅ぼせる程の。

 逆に言えばそれだけだ。いや、それだけだった。


「・・・全く、面倒だな」


 何故こんな事を思ったか。簡単な話だ。解らざるを得なかったからだ。

 解らないという事を、解るしかなかった。精霊という存在の強さを。


 魔核を食べて強くなる。きっとそれは、魔獣全てが持っている性質だ。

 魔獣が組み込まれて作られた化け物の俺にも、その性質は備わっていた。

 だが俺には他の性質も存在している。今までは実感の無かった力ではあるがな。


 今までは殆ど意識しなかった、魔獣の力とは少し違う感覚。

 それは精霊の力だ。俺の中にある精霊の力が、段々と強くなるのを感じている。

 魔核を食べる度に強くなり、その度に精霊との格の差を感じ始めていた。


 少なくとも今の俺では、けして滅ぼせない存在だという事は解る。


「・・・搦め手すら力で壊せるだけの、頭の悪い程の力が欲しいな」


 だが、そんな存在を『人間』が捕獲していた。俺でもあっさり殺せた程度の連中がだ。

 つまり搦め手にかかってしまえば、格の違う化け物ですら手も足も出ない可能性が有る。

 それは当然ながら俺も例外では無く、強くなればなる程に足りないと思ってしまう。


 それこそ全てを拳で粉砕する様な、脳を一切使わずとも打倒できる力が欲しいと。


『妹は結構ドジっ子で考え無しだから、もう叶ってるよ?』

「ふんっ!」


 イラっとしたので全力で投げ捨てた。循環もかけたのでかなりとんで行ったな。


「ったく、考え無しはお前だろうが。俺は一応考えている」


 確かに余り細かくは考えない様にしているが、それはそれとしてだ。

 わざと無視している事と、本気で考えて無さそうな奴を比べられるのは腹が立つ。


 格の違う存在だとは思うが、恐怖心の類は無いんだよな。

 むしろ殴って良い相手とすら思っている。自分でも変な感覚だ。

 街に帰って狐を見れば、また違う感覚になるのかもしれんな。


「さて、とりあえず適当に捌いて食うか」


 吹雪いているから時間が解り難いが、多分もうそろそろ日が暮れるはずだ。

 少しだけ暗くなってきているので、完全に明かりが消える前に肉を捌きたい。

 まあ暗くなったとしても、明かり程度の火は出せはするが。


 そもそも肉焼くのに火が要るしな。

 薪が無いから魔術を使うしかないのが難点だ。

 寝てる間も火を保てるなら、上着を脱いで寝れるんだが。


 いや、そもそもその場合は、熱波の魔術を使うな。


「・・・これ、捌くの面倒だな」


 トカゲ鳥にナイフを入れるも、さっきからよく引っかかる。

 筋が固い。物凄く固い。ナイフを使うより、手で千切った方が早いレベルだ。

 仕方ないので手袋を外して、無理やり手で千切って行く。


 こんな面倒な事になるなら、解り易い四足動物を狩った時に済ませれば良かった。

 などと思っても仕方ない事を考えながら、雑に解体を済ませて火であぶる。


『兄はこの辺りが良いなー!』


 そして肉が焼けた辺りで戻ってきやがった。


「・・・自分で焼け」

『妹が焼いたのが美味しそう!』

「誰が焼こうと一緒だ」

『やーだー! 妹が焼いたのがいーいー!』

「今すぐ食べたいだけだろうがお前は!」


 ギャーギャーと騒ぎながら、結局肉を分けて追加で焼く。

 どうせ満腹になるまでは食うのだから、騒ぐだけ面倒だ。

 そうして黙々と焼いて食っていると、精霊がふと口を開いた。


『そういえば妹、投げられた所に古代種が居たよー?』

「・・・古代種?」

『もぐもぐ・・・おいしーい! ちょっと固いけど悪くないね!』

「オイコラ半端に話を終わらせるな」


 何だ古代種って。もっと詳しく話せ。


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