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第171話、貫く力

「ふぅ、すっきりした」

『兄は酷い目に遭った!』


 昨日は寒い雪山の中という事もあり、体を拭く事もしなかった。

 それが多少は不快感になっていたのか、風呂上りの気分がとても良い。


 熱波は使ってみた所、若干消耗が大きめの魔術の様だ。

 一瞬使うには問題無いが、続けて使うと案外魔力を使う。

 とはいえ若干程度の事なので、そこまで大変な消耗でも無い。


 なら魔力が余ってる状態なら、気にせず使って問題無いだろう。

 明日から大分快適だな。とはいえこの熱波を無意識に維持は難しそうだが。


「あの魔獣は常に維持していた様だが・・・どうやっていたのか」


 魔術の構成は同じはずだ。だが何かが違う。あれと違って常に維持は出来そうにない。

 となればやはり、防寒具が必須装備だったな。維持出来なければ寝てる間に凍え死ぬ。


「生まれながらの本能か、種族特性なのか・・・とすれば俺には無理だろうな」


 出来ない事はスパッと諦め、今日手に入れた魔核を手に持つ。

 先ずは狸の魔核を飲み込んで、猪の時と同程度の感覚を覚える。

 ただ今回は数が有るので、あの時よりも更に底上げが成されている。


「意外と効率が良い、のか?」

『おー、結構強くなったねー』


 凄まじく手ごたえが無かったというのに、その割には強化の割合が高い。

 勿論劇的に強くなった訳ではないが、確実に強くなれたと感じる影響はある。

 とはいえ今回手に入れたネズミの魔核は、一つでそれを遥かに超えるが。


「相変わらず見た目は変わらんな。んっぐ・・・さて、どんなもの―――――――」


 ゴクリと魔核を飲み込むと、今までとはまるで違う感覚が体に走った。

 体の芯から熱を持つ様な、ドクンと血が廻る様な、明らかに何かが変わった感覚。

 今までの様なじんわりとした底上げでは無く、思い切り力が足されたと感じる。


「これは、中々、だな」

『おー、すっごい魔力上がったー』


 勿論倍以上強くなったとか、流石にそんな感覚は無い。

 もしそれ程の影響がるならば、ネズミとの戦いはもっと苦戦したはずだ。

 つまり格下の魔核ではあるのだろうが、大きく格下では無かったという辺りか。


 だがそれ故に明確な影響を感じ、そしてこれを複数匹狩る事が出来れば。


「少なくとも、今の倍の強さは、簡単に手に入る・・・!」


 ぐっと拳を握り、更なる化け物になれる可能性に歓喜した。

 ここまで魔核を食べて来て、強くなるのにどれだけの時間がかかるか不安があった。

 だが一体でこれだけの強化が見込めるのであれば、不安がる必要は無さそうだ。


 俺の身体能力は、今の時点でも化け物だ。それは間違いない。

 精霊の力を借りたメラネアと戦える時点で断言して良いだろう。

 それが倍以上の強さになれるとなれば、早々後れをとる事は無いだろう。


「とはいえ、油断は出来んだろうが」


 魔力があり、魔術があり、魔獣が居る世界で、人間はまだ生きている。

 今まで出会った人間の殆どは、この世界で良く生きていられるなと思う程度だった。

 勿論そこそこ強い連中は居たが、災害クラスの化け物に対抗できるとは思えない。


 だが、そんな災害クラスが生まれなかったかと言えば、そんな事は無い気がする。

 人間にも化け物は居る。そんな予感がひしひしとするんだ。


「だからこそ、俺の様な化け物を生んだんだろうしな」


 俺を生んだ研究者たちは、復讐の為に心血を注いでいた。

 それは自分の研究が正しいと証明する為でもあったのだろう。

 だがこれだけの化け物でなければ、人間を打倒するに至らないと思っていたのでは。


 少なくとも国に喧嘩を売って勝利する為には、この程度は最低限必要だと。


「・・・今まで出会った連中が全員手を組んで襲ってきたら・・・死ぬかもしれんしな」


 始めに行った街の支部長、ゲオルド達、辺境の支部長、連携を取った辺境騎士と魔術師。

 一人一人はさほど強くはない。むしろ一撃で下せる自信がある。

 だが後ろで魔術師が補助をしつつ、前線組が消耗戦をしながら俺の隙を狙えば。


 それはきっと、起こりえなくはない結末だ。

 俺は化け物だが、所詮はそれだけ。今は化け物どまりだ。

 犠牲を伴えば対処の可能性が有る程度でしかない。


「それが解っていて、全力で喧嘩を売る俺も馬鹿だがな」


 解っている。完全な悪党に徹するなら、もっと賢いやり方がある。

 上手く迎合するふりをして、立ち回りで悪党を成す事も。

 しかし俺にそんな真似が出来るとは思えない。俺は凡人だからな。


 だからこそ今生を好きに生きるのは、この才能に頼るしかない。

 理不尽を覆す為に、暴力で持って逆らうしかない。


「馬鹿を貫き通す。その力が、ここなら確実に手に入る・・・!」


 馬鹿な悪党、我を通す悪党、規則に逆らう悪党で居続ける為の力が。


『妹が若干お馬鹿さんなのは兄知ってるよー?』

「お前に言われたくない」


 一気にテンション下がった。


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