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第167話、狸との戦い

「ふっ」


 最早慣れ切った魔力循環を一瞬で済ませ、ほぼ同時に軽く踏み込んで飛ぶ。

 余り力を入れると逆効果だと、ここまでの道のりで学んだからな。

 そして狙い通りの軌道で突進すると、白狸達は驚いた様子で固まった。


 まさかと思いつつそのまま先頭の狸を殴ると、抵抗なくその命を終える。


「・・・」


 余りにアッサリで少し驚くが、足は止めずにそのまま追撃。

 次の狸に近づくも、まだ狸達は驚きから回復していない。

 そうして次の狸も簡単に打ち抜けてしまい、手ごたえという物が全くない。


 ただ流石にそこで狸達も正気に戻ったのか、動きを見せた。


「「「「「―――!」」」」」

「・・・え」


 え、なに、突然全員倒れた。何だこれは、一体何をするつもりだ。

 狸達の行動が理解出来ず、警戒して足を止める。

 ただ暫く見つめても動く様子は無く、狸達は変わらず倒れたままだ。


「・・・おい、まさか死んだふりじゃないだろうな。いや、気絶か?」

『寝ちゃった?』


 狸は驚くと簡単に気絶する、という話は一応聞いた事がある。

 後は狸寝入りか。本当に死んだふりで誤魔化すらしい。

 実際にその姿を見た事は無いんだが・・・いや待て嘘だろ。


 お前らそれで俺から見逃して貰えると本気で思ってるのか。

 大体襲って来るつもりだったんだろうが。負けそうになったら死んだふりって。

 それが通ると思ってるなら、流石に残念なおつむ何てレベルじゃないぞ。


「・・・ふんっ」

『おー、流石妹容赦ない』


 死んだふりな事など無視して拳を振り抜き、狸の頭が砕ける。

 すると流石に死んだふりは無理だと思ったのか、狸達はワタワタと飛び上がった。

 今度は一目散に逃げだそうと始めたが、それこそ考えが甘すぎる。逃がすか。


 と思ったが、群れを成して来たのに全員バラバラに逃げ出した。

 これは全て追いかけるのは難しい。とりあえず一番近いのを殴りに行こう。

 そうして出来る限りの追撃をして、周囲から狸が居なくなった所で循環を止めた。


「て、手ごたえが無さ過ぎる・・・」

『弱かった!』


 吹雪の魔獣や熊カモシカの存在を知っていたから、大分警戒して戦闘に入った。

 だが蓋を開けてみれば、下手をすると街道の魔獣よりも弱かった気がする。

 というか、死んだふりは無理があるだろ。何で通用すると思った。


 あれで本当に山奥を生きて行けるのか。どう考えても無理だろうあの狸達は。


「とりあえず魔核を取り出すか・・・」


 狸の死体を一か所に集めてから、魔核を先に取り出しておく。

 すると魔核を握った所で、思った以上の力を魔核から感じた。


「えぇ・・・何で」


 納得がいかない。あの猪と同じぐらいの力をこの魔核から感じる。

 確かに猪もあっさりと倒してしまったが、あれとこの狸は同等なのか。

 どうにも腑に落ちない気分を抱えながら、一旦魔核は懐に仕舞う。


「先に肉だ」

『お肉!』


 それから腹ごしらえをしようと思い、雑な解体をして肉を切り分ける。

 素材を持ち狩る気が無いからな。食料としか見てないのでこれで良い。


 その辺に放置しておけば、別の獣が残りを食べるだろうし。

 処理は余りキチンとしてはいないが、味を求めていないので良いだろう。

 せめて持って帰るつもりなら、きっちり血抜きを終わらせてからにするけどな。


「おそらく生でも行けるとは思うが・・・一応焼いておくか」

『兄も! 兄も食べる!』

「好きに焼いて食え」

『わーい!』


 魔術とは言い難い魔術もどきで火を出し、固定しておいて肉をあぶる。

 そうしている内に空腹を感じ始め、若干の気持ち悪さを覚えた。

 更には胃腸が動き始めたのか、ぎゅるるるると音もなり始める。


「・・・もう良いか」

『良いの?』


 気持ち悪さを我慢しながら肉を焼くも、我慢が出来なくなり途中でかぶりつく。


「おっ、美味い。何もつけてないのに」

『あまーい!』


 肉は焼いただけであり、塩もタレも付けていない。なのに肉自体が甘い。

 勿論宿の食事とは比べるべくもないが、干し肉よりは遥かに良いな。

 むしろもっと不味い物を食べる想定をしていたので、嬉しい誤算と言えるだろう。


「もぐもぐ、はぐ、んぐっ」

『もっしゃもっしゃ』


 その後は暫く、一人と一匹の咀嚼音だけが、周囲に響き渡る。

 いや、片手で食べながら片手で焼いているので、肉が焼ける音もしているか。

 何にせよ食べる事に集中していると、一匹分はあっという間に無くなった。


「足りんな・・・」

『もう一匹いく?』

「そうするか」

『おっにく、おっにく!』


 二匹目も腹を掻っ捌き、同じ様に雑に解体して肉を切り捌く。

 適当に切り分けた肉を投げると、俺が解体している間に肉を焼く精霊。

 俺の為に焼いている訳では無く、自分が食べたいだけっぽいな。


「あっ、貴様、そこは一番美味かった部位だろう! 半分は残せ! むしろ半分も食うな!」

『ばれた・・・!』


 さっき一体分食べて美味かった部位を、真っ先に食おうとしてやがった。

 一旦解体を中断して肉を取りあげ、食い終わってから再開した。


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