表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/370

第146話、真相

「とりあえず話が纏まった以上、ここに居る理由も無い。俺は帰る」

「では道案内を付けやすよ。アンタ様の方向音痴は存じてますんで」

「晴れてれば迷わん」

「今は雪が降っておりやすが?」

『わーい!』『雪丸めるぞー!』『今日も雪投げだー!』『肉よりこっちの方が良いよね!』


 言われて外に目を向けると、しっかりと曇って雪が降っていた。

 さっきまでそこそこ晴れていたはずだ。本当に天気が変わり易いなここは。

 というか途中から小人が静かだと思ったら、外で雪玉丸めてやがった。


「・・・案内を頼む」

「お任せを。おい、掃除を頼んだぞ」

「「「「「へいっ」」」」」


 男が指示を出すと、部下連中は元気よく答えて散開して行った。

 この肉片を片付ける為の道具でも取りに行ったか。

 その場に残ったのは、最初に動じていなかった数人の男達。


「では行きましょうか」

「頭自ら案内をしてくれるのか?」

「いえ、帰り道ですんで、途中まではご一緒にと」

「そうかい」


 兎に角何でも良い。とっととスラムから出て宿に帰りたい。

 まだ半日も経ってないと言うのに、随分と疲れた気がする。

 いや、気のせいじゃないな。若干の脱力感がある。


 恐らく循環の影響だろう。少々力を込めてやり過ぎた。

 自然に流せる以上の魔力を使う訓練が仇になったか。

 だが無意識で使えたという事は、成長はしているという事だろう。


 とはいえ無意識に披露しているようでは、使いこなせているとは言い難いが。


「そうだ、自己紹介をさせて下さい。俺の名はレグツァ。以後お見知りおきを、お嬢」

「え、は、はい。レグツァさん、ですね」

「敬称など要りやせんよ。レグツァ、と呼び捨てで結構です」

「え、は、はいぃ・・・」


 何だコイツ。ぐいぐい来るな。メラネアが引いてるじゃないか。

 俺の背後に隠れ、面積が不安だったのかブッズの背後に隠れ直した。

 ブッズは苦笑しつつも、メラネアが隠れやすい様に位置を変える。


 ただ狐はそんな様子を見ても、愉快気に笑っているだけだ。

 コイツもこいつで、やはり感性が良く解らんな。

 メラネアは嫌がってるはずだが、これは別に良いのか?


「これは失礼しました。お嬢は控えめな方の様で。ただもし何か困った事が有れば、気軽に俺の名を出してお尋ね下さい。お嬢が来た時は絶対に通す様に伝えておきますんで」

「は、はい・・・」

「勿論アンタ様も通す様に伝えておきやす。でないと何人死ぬか解りやせんしね」

「そうしておけ」


 俺とメラネアで露骨に態度が違うが、別に舐めている訳では無いだろう。

 警戒して下手な対処が出来ない相手と、命を救われた相手の差だ。

 俺としてはどうでも良い話なので、適当に流しておく。


 どうせ通して貰えなかったとしても、ぶん殴って押し通るだけだ。

 その際に怪我人が出ようが知った事か。通達してないこいつが悪い。


「所でブッズ、お前は誰に何故攫われたのかは解っているのか?」

「ん? アイツ等だよ。ちょっと前に嬢ちゃんに絡んで殴り飛ばされた連中だ。組合に訴えても衛兵に訴えても動かねえってんで、逆恨みしてたみてえだな。自分から喧嘩売ったくせによ」

「・・・予想通りだったか」


 組合では警告がされているというのに、態々俺に絡んできた馬鹿共。

 そして支部長が「面倒」と言う程に、物が見えていない連中だった。

 人を殴る事は良くても、殴られたら被害者面する連中だからな。


 当然組合も衛兵も話を聞く気など無く、誰にも相手にされなかっただろうさ。


「嬢ちゃんに喧嘩売れば二の舞なのは理解してたらしくて、魚の糞みたいについて回ってる俺を襲ったんだと。まあ俺自身も妬まれてたっつか、昨日のが止めだったみたいだな」

「昨日?」

「ほら、分け前貰ったろ。実力が無いのに嬢ちゃんにおんぶにだっこで儲けてる。そんな野郎が気に食わなかったんだとよ。だからって嬢ちゃんに頭下げる気は無かったらしいがな」

「あの時点で付けられていたという事か?」

「いや、何か後で偶々知って、俺を見つけた時も衝動的っぽかった。連中の言ってる事が合ってるならだけどな。少なくとも嬢ちゃんの後を付けてた訳じゃ無いらしい」


 じゃあ何か。昨日の換金を偶々知って、そして一人になった所で偶然遭遇。

 そのまま怒りに任せてブッズを襲い、スラムまで運んで拷問をしたと。

 無茶苦茶だな。だからこそ足取りを掴むのが面倒だったんだが。


「嬢ちゃん達を宿に送り届けた後、のんびり帰ってる途中で頭をガツーンとやられた。油断してた俺が悪いっちゃ悪いんだが・・・気が付いたらもうここに居て縛られてたよ」

「よくその一撃で死なずに済んだな」

「俺もそう思う。んで幸か不幸かわかんねーけど、後はあの通りだ。ただの腹いせだな。子供にこき使われる情けない野郎とか言われたけど、そんな子供に殴られて周囲に助けを求める奴は情けなくねえのか、って煽ったらまー酷い酷い。眼を血走らせて怒鳴りながらボコボコだよ」


 その状況で煽るこいつもこいつだが、どちらにせよ結果は変わらなかったか。

 あそこまでやる連中だ。煽られなくとも行きつくところまで行きつくだろうよ。

 そしてこれはやはり、結局は俺の行動のとばっちりだな。


「・・・そうか。悪かったな、俺のせいで」

「なーに言ってんだよ。悪いのは連中だろうが。嬢ちゃんに何の落ち度があるよ」


 すっと出てきた謝罪だった。意識をせずに出た言葉だった。

 だがブッズはそんな俺の頭を撫で、気にするなと何時も通り告げる。


「おれも一歩間違えばああなってた。だから、やっぱり感謝しかねえよ」

「・・・馬鹿が。お前は本当に大馬鹿だ」

「ははっ、知ってる」


 からからと笑うブッズに対し、それ以上かける言葉は浮かばなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ