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第139話、待ち時間

「・・・」

「・・・」

『・・・』

『らったったー♪』『たらんらー♪』『るーららー♪』『テーン!』


 俺は一体何を見せられているのか。何故か知らんが小人共が唐突に踊り始めた。

 何か意味が有るのかと思って黙って見ていたが、特に意味がある様には思えない。

 むしろ馬鹿にしてんのかと、今すぐにでも投げ捨てたくなってくる。


 だが今はこいつの力を借りている以上、何時もの様に投げ捨てる事は出来ない。

 そもそもこうやって踊っている間も、どんどん小人は増え続けていた。

 まるで初めからそこにいた様に、突然ポンと空間に現れる。


 そして「探せ探せー」と叫んで散って行き、つまり見つかった様子は無い。

 とはいえ探し出してからさほど時間が経っていない以上、文句を言える事でもない。

 ただ静かに、良く解らない踊りを見ながら、小人の報告を待つしかない。


「ん?」

「あれって、騎士さん、だよね?」

『魔術師も居るな』


 ただ暫く待ち続けていると、領主の所の騎士達が現れた。

 魔術師も共に居り、その魔術師は俺達の方を指さしている。

 いや、方というよりも、俺達をさしているのだろう。


 そして予想通りというべきか、連中は俺の傍へと近づいて来た。


「ミク殿、メラネア殿、これは一体何事か!?」


 そして騎士の一人が開口一番に怒鳴って来たので、じろりと睨み上げる。

 訊ねたという声音ではない。明らかに咎める類の声音だったからだ。

 だが騎士はそれに怯む様子は無く、むしろ俺を睨み返して来た。


「一体何をされている。貴殿はこの街で何をするつもりか」


 そして剣を抜きはしないものの、手に添えて再度問いかけて来た。

 答えいかんによっては容赦しない、という意思表示だろう。


 それはある意味で正しい。この男は街を、住人を守る騎士だからだ。

 街中で何かしら異変を感じ、その原因で在りそうな相手に問い詰める。

 そして本当に原因だった場合は、剣を抜いて制圧するべきだろう。


「抜け。殺してやる」

「―――――っ」


 だが敵対行動をとった相手に、俺が態々説明してやる義理は無い。

 むしろ今邪魔をして来るならば、こちらこそ容赦はしない。

 そもそもが、貴様程度で俺に勝てると本気で思っていたのか。


「き、貴殿は何を言っているのか解って―――――」


 だが流石に俺の殺意に圧されたのか、騎士は剣を抜かずに口を回した。

 なのでもう面倒だと思い、死なない程度に殴り飛ばす。

 俺の拳が見えなかったらしき騎士は、そのまま地面を跳ねて吹き飛んで行った。


「解っていないのは貴様だ」


 あの騎士の態度は、自分達と同じ所属の人間に向けてのものだ。

 そうでなかったとしても、同じ規則の中にいる人間へ向ける言葉だろう。

 ならば悪党の俺が取る行動は当然決まっている。邪魔をするなと言うだけだ。


 不要な規則に縛られる気は無いし、そもそも仲間意識も存在しない。

 先日顔合わせをしたからと、まるで俺が領主の所属と勘違いするな

 その上俺の従う気がない態度を見て、背後の存在を考えろという発言と来た。


「勘違いしている様だから教えてやろう。俺は領主の配下でも何でもない。ただの利害関係だ。貴様等の指示に従う理由も無い。邪魔をするなら殺す。騎士だろうが何だろうが知った事か」


 これでもまだごちゃごちゃぬかすなら、全員ぶちのめす。

 そう思って告げた言葉だったが果たして・・・魔術師が前に出て跪いた。

 すると魔術師の行動に従う様に、残りの連中も膝を突きはじめる。


「ミク殿、どうかお怒りをお沈め下さい。我々は街中に異変を感じ、その場に貴女が居た事で真意をお教え頂きたいだけです」

「教える義理は無い。少なくとも敵意を向けて来る様な連中にはな」

「弁明のしようもありません。この者には厳重に注意をしておきます」

「まるで貴様等には関係が無いとでも言いたげだな。止めなかった連中が笑わせる」


 あの騎士の立場がどの程度かは知らないが、止めなかった以上俺にとっては全員同類だ。

 殴り飛ばされて初めて機嫌を伺っている以上、その判断は間違っていないだろう。


「っ、おしゃる通りです。申し訳ありません」

「はっ、その謝罪に何の意味と価値がある。逆に不愉快だ」


 相手が俺だから、こいつらは折れるしかなかった。ただそれだけの事だ。

 つまりこの謝罪に心など無い。とにかく俺を宥める為だけの薄っぺらな言葉だ。

 唯々不愉快だ。俺を規則に嵌めて咎めたのも、覚悟の無いこの連中も。


「本当に申し訳ないと言うのであれば、今すぐ―――――」


 消えろ。お前らに構っている心の余裕はない。

 そう思って伝えようとした言葉は遮られる。


『『『『『『『『『『見つけた! こっちー!』』』』』』』』』』

「っ!」


 小人の大きな言葉を聞き、指をさす方へと走り出した。


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