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第134話、素材売り払い

「さて、帰るか。熊は俺が持つ、ブッズはそっちを持て」

「あいよ」


 熊の魔獣の首元あたりを握り、ずるずると引きずる。

 下が雪なので、引きずって痛むという事はほぼ無い。

 例え雪が無いとしても、素材の痛みには余り興味がない。


 どうせ魔核の方が高い。なら余り気にする事でもない。

 そもそも魔獣の毛皮は頑丈なので、簡単に痛みはしないしな。


「え、えと、わ、私は、何か手伝わなくて、良いのかな」

「メラネアの力では、どちらの魔獣も運ぶのは難しいだろう」

「う・・・そう、だね」

『非力だからなぁ。ははっ』


 彼女は確かに戦闘能力は高い。だが筋力は見た目より少し強い程度だ。

 今回狩った魔獣はどちらもメアネアより大きく、運ぶには中々に重い。

 勿論頑張れば持って帰られるだろうが、大変なのは間違いないだろう。


「図体のでかい荷物持ちが居るんだ、任せておけ」

「おう、任された」

『まかせとけー!』『ふははー!』『僕の出番だー!』『役に立つんだぞー!?』


 ブッズの事しか言ったつもりは無かったが、何故か小人が増えて熊を持ち上げていた。

 何処かの絵本の様な光景に、メラネアは目を丸くした後クスッと笑う。


「じゃあ、おねがいするね」


 笑顔でそう答えるメラネアは、代わりと言う様に槍を握り周囲を見回す。

 魔獣が襲ってきた場合、手の空いている自分が対処という事だろう。

 だがその後は一度も魔獣と会う事は無く、辺境の街まで辿り着いた。


 門を通って門番と軽く話し、それから今度は組合へと向かう。


「メラネア、そっちじゃない、こっちだ」

「え、あ、う、うん」


 ただメラネアが通常の受付に向かおうとしたので、声をかけて別の場所へ。

 通常の依頼受付に持って行けるのは、魔核や小さな素材の類だけだ。

 大きい素材や解体前の素材の場合、専用の受付が別の場所にある。


 でないと組合内が血で汚れて、凄い匂いにもなっているだろうな。

 そんな説明をしながら、別館の倉庫の様な処へ向かった。


「おう、嬢ちゃん、久々じゃねえか。今日は一体だけなのか?」

「後ろの男が持つアレも一緒にだ」


 こちらの受付は正面と違い、いかつい親父がやっている。

 単純に受付だけではなく、解体などの実作業もしている類だ。

 初めて来た時に大量の魔獣を渡したので、一発で顔を覚えられた。


 いや、今思えば疑いの目すら向けられなかったので、最初から知っていたのか?


「それでも二体か。嬢ちゃんも寒い時期はあんま働く気がねえ口なんだな」

「仕方ないだろう。戦闘用の防寒具がまだ出来ていない」

「ははっ、確かに、そりゃ仕方ねえか」


 笑顔で熊を受け取り、軽々と抱えて受付の奥に運ぶ親父。

 図体通りの力強さに、メラネアが「凄い・・・」と声を漏らしていた。

 俺はお前の方がよっぽど凄いと思うがな、と同じ言葉をすぐに聞く事になる。


「・・・こりゃあ・・・目を一突きか。そっちの嬢ちゃんがやったのか?」

「あ、は、はい、そ、そう、です」

「・・・すげえな。こんなに鮮やかに一撃でやれるもんなのかよ」


 損傷の無い魔獣を確かめ、目以外に傷が無い事に驚く親父。

 一発で槍の傷だと判断し、その技量の高さに関心の表情を見せる。

 やはり当然と言うべきか、ここまで鮮やかに倒す事は少ないのだろう。


「罠で捕らえた形跡もねえな・・・」

「飛び掛かって来た所を一撃だったぞ」

「はぇ、今どきの子供はどいつもこいつもすげえな」

「俺達と世間の子供を比べるのは無理がある」

「ははっ、ちげえねぇ」


 かっかっかと愉快気に笑いながら、二体とも受け取る親父。

 その後俺とメラネアに視線を往復させ、少し思考する様子で口を開いた。


「それでこれは、二体別々の受け取りで良いんだよな?」

「熊はこの男と俺で半々で良い」

「・・・そっちの兄ちゃんも手伝ったのか?」

「訓練代わりに戦闘させた」

「そりゃあ厳しい話で。んじゃ組合証をくれるか」


 苦笑する親父は、恐らく解っているんだろう。こいつに熊は倒せないと。

 だが俺の決定に特に異は唱えず、言われた通りに処理をしようとする。


「いや、受け取れねえよ。全部嬢ちゃんの物で良い」


 だがブッズがそこに異を唱え、一人組合証を出さなかった。


「煩い良いから出せ」

「うえ!? お、おい!」


 なので問答無用で組合証を取り出し、親父へと受け渡す。

 何処に入れているか知っていたからな。

 親父は愉快気に笑って三つの組合証を受け取った。


 そうして処理を終えたら組合を証をそれぞれに返す。


「兄ちゃん、嬢ちゃんに師事受けてんだろ。なら師匠の言う事は聞いとけ」

「・・・おう」


 最後にブッズの組合証を、そんな事を言って返していた。

 どの道既に手続きは済んだので、嫌がってももう意味はないが。


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