表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/370

第129話、選択結果

「それでうちに来た、と」

「そうだな」


 翌日、結局得物が決まらなかったので、とりあえず武具店にやって来た。

 今日も何時もの様に店には娘が居り、こちらの事情を軽く説明した。

 店主は奥で作業をしているのだろう。作っているのは俺達の防寒具だろうが。


 別段今回は店主を呼ぶ程の事でもないので、娘に対応して貰っている。


「ご、ごめんなさい、優柔不断で・・・」

「別に謝らなくて良いと思うよ。ちゃんと使える武器を選ぶのは大事だと思うし。むしろちゃんと悩んでるのが偉い。これかっこいー! で使えない武器選ぶ人だって居るからね」

「そ、そう、ですか・・・」


 ホッと息を吐くメラネアに対し、優しい笑顔を向ける娘。

 確かに使えない武器を適当に選ぶ輩は居る。

 訓練所でも、明らかに身の丈に合わない武器を振ってる奴が居るからな。


 アレは武器を振っているというよりも、武器に振り回されていた。


「うーん、本来は素手が得意なら・・・こういう刃が付いた手甲とかあるけど、どうかな」

「・・・そう、ですね、使えない事は、なさそう、ですね」


 娘はとりあえず店頭に在る武具を色々と手渡し始め、何がどこまで使えるかを確かめさせる。

 ただ当然と言うべきか、本人の宣言通りどれも使えないという様子は無い。

 むしろ上手い。素人目にみても、適当に振るっている感じがない。


「本当に凄いね。疑ってた訳じゃ無いけど、本当に何でも使えるんだね、メラネアちゃん」

「え、えへへ・・・」


 ちょっと照れ臭そうに笑うメラネアだが、これは本気で凄い事だと思う。

 今日も一緒について来ているどこぞの大男は、自分の大剣すらままならないのに。

 というか、あの小柄な体でも、体重移動であそこまで大剣が使えるんだな。


 回転を使うというか、地面の反動を使うというか、アレは俺には真似できそうにない。

 勿論振り回すだけなら出来るが、それで戦闘が出来るかと言われると否だろう。


「おい、大剣で打ち合っても負けるんじゃないか、お前」

「言うなよ・・・俺も今思ってたんだから・・・」


 ブッズは自分でも思っていた事を言われ、部屋の隅で落ち込んでしまった。

 だが事実なので仕方ない。明らかに技量が遥か上をいっている。

 膂力の差とは技量差を覆す事があるが、覆せるだけの膂力差が無い。


 いや、膂力差を覆せる程に技量差が開いている、と言うのが本来は正しいのか。


「うーん・・・どれか得意な物、って感じがあるかなと思ったけど・・・本当に何使っても問題無さそうだね、メラネアちゃん」

「あ、や、やっぱり、そうです、よね」


 そうして出た結論は、最早どの武器でも良いんじゃないか、という事だった。

 どれか一つが秀でているという事も無く、どれかが得意という事も無い。

 万遍無く全てが高い技量であり、武器を選ぶ必要が無いと。本気で凄すぎるな。


「ならもう、敵に合わせて使えばどうだ」

「敵に?」

「そもそも武器の必要性を感じたのは、素手では魔獣への決定打が無いと思ったからだ。ならば魔獣に致命傷を与えられる武器、という観点で選べば良いだろう」

「あー・・・そっか」


 得意な得物、という思考で凝り固まっていたのだろう。

 メラネアは成程という顔をして、改めて武器を眺める。

 それを邪魔しない様に黙っていると、彼女はおもむろに槍へ手を伸ばした。


「これが一番、楽、かな?」

「槍か」

「うん、長さが有るから、防御にも使いやすいし、押し込んだ際に奥まで届くだろうし」

「内臓まで、か」

「ううん、頭の奥まで。目を狙えば、大抵の魔獣は貫通出来ると、思うし」


 戦闘の最中に目を一点で狙う。そんな真似が普通出来るだろうか。

 速度が違い過ぎるのであれば解るが、だとしても大半の獣は顔を守る。

 その反射防御を越える一撃が出来ると、当たり前の様に言ってのけるのか。


 色々と確かめる為に外に出るつもりだったが、これなら確認の必要は無かったか?

 いや、だとしても生活費の問題も有るし、魔獣を倒す事に損はないな。


「あとは・・・この辺りも、数本欲しい、かな」

「短剣か」

「うん、投げても使えるし、近距離は短い方が・・・使い易いと思うかな」


 一瞬、余りいい気分ではない、という表情をしたのを見逃さなかった。

 恐らくこの短剣を選んだ理由は、魔獣と戦う為では無いのだろう。

 俺が言った通り『敵』と戦う為に、人間と戦う事を想定した武器選択だ。


「そっか、じゃあとりあえず、それらを使う前提で・・・うーん、この辺りが良いかなぁ」


 だが武具店の娘はその選択理由に気が付かず、奥から武器を出し始めた。

 表に出している安めの武器ではなく、しっかりとした作りの武具を。

 それを待つメラネアの表情には、確かな決意が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ