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第115話、実報酬

 治療も終わり、一度整列し直し、それから領主の解散の声が響いた。

 これ以上長々と話す事も無いだろう、という判断だそうだ。

 十や百の言葉を連ねるよりも、先程の経験で十分だろうと。


 ただし解散と言われたとしても、領主が去るまでは整列したままだったが。

 当然そのままでは動きは無いので、領主はそそくさと去って行く。

 俺達もその後ろを追い、兵士達の視線を受けながらその場を後にした。


「さて、これで頼みは終わった訳だが・・・二人はこれから用はあるのか?」

「・・・用事か・・・有るには有るな」


 用事と言われて今思い出した訳だが、武具店に向かう約束があった。

 早朝に向かうと言っていたのに、もうすぐ昼と言って良い時間帯だろう。

 あの店主と娘の事だ、変に心配をしているんじゃないだろうか。


「そうか・・・ふむ」

「どうかしたのか?」

「いや、報酬の話をしたいと思っていたんだがな」

「報酬は、さっき決まったんじゃなかったのか」


 今回の件は、領主としても余り良くない行動をとっている。

 重罪人を見なかった事にする訳で、それは報酬とも言えるだろう。

 だからこそ俺は領主に協力的な態度を見せ、先程も案を自ら出した。


「アレは独り言の様なものだ。領主としての公的な言葉ではない。そうだろう?」

「くくっ、随分と大きな独り言だな」


 まあ確かに領主としては「重罪人を見逃す」と公言は出来んだろうな。

 となればそれを報酬と言う形にすると、自分の足かせにもなるという所か。

 あくまで知らぬ存ぜぬ気が付いていませんと、そういう事にする訳か。


 なら後に残るのは、単純に俺達が暗殺者を撃退した事実だろうな。


「メラネア、何か報酬の要望はあるか?」

「え、わ、私!? え、えと、えと、ええと・・・!」

『落ち着けメラネア。叱られてる訳じゃねーんだから』

『僕はお菓子が食べたいです!』


 お前には聞いてない。しかしこの様子だと、答えを出すのに時間がかかりそうだな。

 報酬、報酬か。そうだな、メラネアが思いつかないのであれば、一つ案は有る。


「メラネアに要望が無いのであれば、前回と同じ報酬でどうだ、領主殿」

「前回?」

「俺はこれから武具店へ向かう予定でな、ついでにメラネアの防寒具も注文してはどうかと考えていた。今着ている物は、古着屋で買った物だからな」


 メラネアの来ている防寒具は、古着屋で買った物だ。

 ただの古着屋に有った服であり、値段もまあそこそこと言う所か。

 つまりは戦闘に耐えられる物では無い。防御力など皆無だ。


「成程・・・メラネア殿がそれで良いのなら、私は構わないが」

「は、はい、そ、それで良いです!」

『首がもげるぞ、そんなに振ると』

『あははははっ! これ楽しいかも!』


 ヘドバンかと思う程に首を振るメラネアと、その真似をする小人。

 狐は戦闘中が嘘の様に落ち着いており、苦笑をしながら傍についている。

 もしやこの狐、戦闘になるとタガが外れる手合いか?


「承知した。ではミク殿への報酬はどうすれば良い」

「特に要望は・・・いや、有るな。魔核だ。質の良い魔核を保有しているならば、それを報酬として出せるならば貰い受けたい」


 俺の最大の目的は魔核だからな。別に戦いたい訳じゃない。

 魔核を手に入れる為に戦う必要が有るだけで、楽に手に入るならそれで良い。

 とはいえ報酬で貰う様な魔核一つ程度では、劇的な変化は望めないだろうが。


「ふむ、どの程度の魔核が欲しいんだ?」

「最低でも、先日の吹雪の魔獣程度は欲しい。雑魚の魔核は要らん」

「うっ、その質か・・・ううむ・・・」

「難しいか? なら別に、適当な金額報酬で構わんぞ」


 俺としては、報酬が有るとすら思っていなかった。

 貰える物は貰いはするが、元々手に入らなかった物だ。

 無理だと言われれるなら別に構いはしない。


「・・・いや、ここで報酬を渋る訳にはいかんか。解った、今すぐに渡すのは無理だが、近い内に渡せるようにしておく」

「そうか、期待している」


 領主の渋そうな顔を見るに、本当に期待できるかは解らんがな。

 ともあれ多少質が劣っていても、結局役に立つので構わない。

 握ってみて不足と感じれば、そのまま適当に売りに行くだけだ。


 魔核は高いみたいだからな。宝石の上位互換だろうアレ。

 宝石と違って中身が重要だから、傷とかで査定が変わらないし。

 何なら手持ちの宝石全部魔核に換えようかな、とすら思っている。


「そうだ、武具店へ車を出そうか? 私も報酬の件で、使いを出しておきたいしな」

「では、お言葉に甘えるとしよう」


 この休みが多い時期に大繫盛だな、あの武具店。

 休みたいと思っているなら、大迷惑な気もするが。

 まあ良いか。あの店主の断る想像がつかんしな。


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