表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/370

第102話、決着

「とりあえず、大体の事情は分かった。コレと違い話の分かる精霊で良かった」

『兄だって話の分かる精霊だよ!』


 お前のどこが話の分かる精霊なのかと、とても強く問いたい。

 問うたところで全く意味が無いので、無駄な事をする気は無いが。

 さて、ならば後やる事は決まっている。この奥に居る連中を殺すだけだ。


 そう決めたら視線を娘から切り、同行している男へと向ける。


「おい、この子供の事はお前に任せる」

「―――――解った」

『まかせたよー!』


 男は一瞬何か言いたげだったが、反論する事無く頷いた。

 娘も何か言いたげだったが、そちらも特に何か言う事は無い。

 狐は満足気に娘を見ている辺り、余り他の事に興味は無いのだろう。


「こっちか」


 二人に背を向けて奥へと歩き出し、ずっとこちらを見ていた気配へと向かう。


 あれからこちらを見る気配はずっとあった。狐と戦っている時もだ。

 ならば視線の主は、あの娘が敗北した事を知っているはずだ。

 だというのに逃げないのは、魔道具を置いて行っているという事だろうか。


 もしそうなら探すのは面倒だな。出来れば道具の傍で怯えていて欲しい。

 等と考えながら、鍵のかかった扉を殴ってぶち壊す。

 鍵を探すつもりも無ければ、屋敷の住人に気を使ってやる気も無い。


「ひっ」

「た、たすけて・・・!」

「私達は雇われているだけなんです!」


 その向こうで使用人らしき者達に会ったが、全て無視して奥へと向かう。

 本人達の言う通り、ただ雇われて屋敷を管理しているだけだろうからな。

 戦闘職の気配も無ければ殺気も無く、別段相手をする意味も無い。


 ならとっとと先に進んでしまい、目標を殺す方が良い。


「・・・行き止まり?」

『まりー?』


 何故か付いて来ている精霊と一緒に首を傾げる。

 気配を辿って来たのだが、その先には壁しかない。

 何処か遠回りして入る通路が有るのだろうか。


「面倒だ、な!」

『どかーん!』


 通路を探す気など毛頭なく、壁をぶんなぐって破壊する。

 中々頑丈な壁だったな。もしやこの辺りだけ作りが違うのか?


「ば、馬鹿な! 壊せるはずがない! ハンマーで殴ってもビクともしないんだぞ!?」


 そして破壊した壁の向こうから、どこかで聞いた事がある様な声が聞こえた。

 目を向けると、顔も見覚えがある気がする。だが思い出せない。誰だ。

 いやまあ誰でも良いか。誰だろうと結末は決まっている。


 叫んだ男の隣にいる、青ざめた様子の女もな。

 だが拳を握る俺を見た女は、慌てて両手を上げて口を開いた。

 その手には水晶の様な物が在り、俺の探っていた魔力はそこに繋がっている。


 成程、それで見ていたという事か。やはり魔道具の類だったらしいな。


「待って、降参するわ。あの子がやられた時点で勝ち目はないもの。要求があるなら何でも飲むから、あの子を生かして返してちょうだい。金なら積むわよ」

「あの子を? 私をの間違いじゃないのか?」


 てっきり自分の命を助けてくれ、というのかと思った。

 まさかあの娘の命を願うとは予想外だ。


「私だけ帰っても殺されるだけだわ。大事な商売道具を捨てて来たのか――――――」

「ひっ!?」


 女の言葉が途中で止まり、男の悲鳴が小さく上がる。

 何故なら女の頭は既に存在せず、飛び散った物が男にかかっているからだ。

 勢い良く拳を振り抜いたおかげか、俺は拳以外に血は付いていない。


 余りに耳障りだったので、全部聞く前に思わず殴ってしまった。

 まあ、どのみちやる事は変わらなかったので、何も問題は無いが。


「・・・ああ、思い出した。お前あの時の馬鹿騎士だな」


 男の恐怖の顔を見ていたらふと思い出し、成程コイツだったのかと合点がいった。

 以前領主の命令を何か勘違いして、俺に絡んできた馬鹿騎士だ。

 つまりこいつは本来の標的を狙わず、恨みの有る俺を殺そうとした訳か。


「――――――ふ、ふざけるな! 誰が、誰が馬鹿騎士だ!」 


 俺の呟きに怒りで恐怖を忘れたのか、掴みかかるかと思う勢いで叫び出す馬鹿騎士。

 だがその様子に迫力などは無く、ただ血走った表情には正気を疑う。


「どいつもこいつも俺の事を馬鹿にしやがって! 俺を誰だと思ってやがるんだ! 辺境の連中は血を何だと思ってやがる! 俺は―――」


 だが男の言葉も途中で消えた。聞く気の無い口上を俺が拳で止めた事で。

 これで頭部のない死体が二つ出来た。面倒な事を起こした原因は殺した。

 だが終わった今の気分は、相変らず苛立ちだけが募っている。


「・・・くだらない」


 何もかもが下らない。この馬鹿騎士も、子供を道具に使う暗殺者も。

 そしてそんな者達の存在に、感情を振り回されている俺自身も。

 本当に、余りに下らな過ぎる。ただただ不愉快な一件だった。


『よしよし。いい子いい子。頑張ったね』

「煩い撫でるな」


 そんな俺をどう思ったのか、精霊は暫く頭を撫で続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ