勿体ない
帰宅途中の中高生が次々に私の店に入って来る。
彼等は数百メートル先にある中高一貫校の生徒たち。
全寮制の学校で、学校と反対側数百メートルのところにある寮で集団生活をしている。
学校の周りに農家がポツンポツンと存在するだけのど田舎。
コンビニなど無く唯一私の店が買い食い出来る場所なのだ。
「コロッケください」
「俺は、ハンバーグ」
注文されたコロッケ、メンチカツ、ハンバーグなどの商品を、袋代わりの8枚切りの食パンに挟んで子供たちに差し出す。
当然食パンはサービス。
子供たちは食パンに挟まれたメンチカツなどを受け取ると、これもサービスで置いてある数種類のソースのうちから好きな物を選び、好きなだけかける。
皆、美味い、美味い、と食パンに挟まれたコロッケなどを頬張り、店から出て歩き食いをしながら帰って行く。
中高生の中に少なからず存在する舌が肥えている子供たちには、美味しいんだけど微妙に味が変わることがあると言われる事がある。
それは俺の店が近隣の猟師が猟ってくるイノシシやシカなどのジビエの肉を販売しているからだ。
解体するときに出る切れ端や売れ筋で無い肉をミンチにして、メンチカツやハンバーグなどのミンチ肉に練り込むから微妙に味が変わるのだと、子供たちには説明している。
嘘は言ってないんだけど俺は肉屋って商売の他に、ある反社の組織で死体処理の仕事もしている。
実入りから言うとこっちの方が本業と言えるんだけどな。
週に3〜4体運び込まれる死体の大部分、シンナーや薬をやっていたのや入墨だらけの奴、それに20歳以上の死体はミンチにして豚の餌にしている。
ただ偶に2〜3カ月に1〜2体程の割合でシンナーとか薬とかをやって無い10代前半の若い奴の死体が運び込まれる、牛と同じく若い奴の肉は軟らかく変な匂いもしない、そんな肉を豚の餌にするのは勿体ないんで、ハンバーグやメンチカツのミンチ肉に練り込んでいるって訳なのさ。