怪しい家
この道は私の家の方だ。
「何処に向かっているの?私の家に用事?」
質問の答えはかえってこない。その代わりに歩くスピードが早くなる。仕方が無く彼の後をそのままついて行く。
「やっぱり私の家じゃない!?」
その言葉と同時に息を飲む。今朝見た光景と明らかに違う。私の家の前は10台ほど止められる駐車場だった。だったというのは今は違うからで、今朝までなら駐車場だ。というのが適切だろう。でも今は駐車場だった。になってしまった。頭の中が混乱して文章が変なのが自分でもわかる。今朝まで駐車場だった場所に今は1軒の家が建っている。その家に彼は何も言わずに入っていく。玄関というものがないのか靴を履いたままどんどん進む。二階にある部屋に入りベランダに出る窓を開け、一緒に出てくるように合図をし、私の家の方を見るように促した。
「えっ!おまえがいない!!」
「はっ?何を言ってるの?私はここに居るのだから家にいるわけないでしょ?変なこと言わないでよ。」
「本当に知らないんだな?」
「俺は陽の方の人間だ。」
「だから、陽とか陰とかって何なのよ?」
「知らないなら説明が難しいのだけど、今の状態では二つの世界が存在していて、それが陽の世界と陰の世界だ。」
「・・・。」
「陽の世界で生きているのが普通で、陰の世界は影が支配している。」
「それってどういう事?難しくてわからない。」