表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WBC(世界戦艦選手権:World Battleship Contest)開幕!!  作者: ほうこうおんち
序章:世界戦艦選手権World Battleship Contest
1/20

神の気まぐれ

 ここに神が居る・

 ギリシャ神話ではアレスと呼ばれ、古代中国では蚩尤と呼ばれ、古代インドではカーリーと呼ばれた。

 人間がどう呼ぼうと関係ない、ただ戦いを好む超越者が存在した。

 その神は思った。

「久々にドンパチが見たいなあ」

 その神に仕えている従者というか、天使というか、その存在は突っ込まざるを得ない。

「貴方様のような神ならば、古代から未来まで時間を超越し、あらゆる戦争をご覧になられるでしょう?

 下界なんていつでも戦争をしているのですし、久々というのはどういう事なのでしょう?」

 神は溜息混じりに答える。

「人間ども、どんどん戦いがエレガントでなくなっていく。

 戦争は人間同士で行うからこそ意味がある。

 ボタン一つで自動攻撃する機械など、つまらぬ」

「では古代の戦争をご覧になればよろしいでしょう。

 肉弾戦ですよ」

「それは戦争ではなく、決闘というものに近い」

(なんか毎度の事ながら、わがままですぞ)

 天使はツッコミが面倒になって来た。

 もうこうなっては、どんな指摘をしても「それは違う」と言って来そうだ。

 いっそ、どんな戦争を見たいのか聞いてみたい。


「うむ、人間どもが肉体を使い、その文明の利器をただ破壊の為に叩きつけ合う戦いが見たい」

「例えば、戦闘機の格闘戦(ドッグファイトとか戦車の一騎打ちとかですか?」

「そうだ、そういうものだ」

「ならば、第一次世界大戦とか人間が呼んでいる戦争にアクセス……」

「だがその戦争のは見飽きた」

「はあ……」

 天使だって疲れて来る。

 結局何をどうしたいのだ?

「私は、戦艦同士の殴り合いが見たい」

「はあ、でしたら日本海海戦(バトルオブツシマ)とかユトランド沖海戦とかにアクセス……」

「あれも見飽きておる!

 それに、あれは片方が長期の航海で疲れ果てていたり、そもそもの数に違いがあったりする」

「はあ……。

 要は戦艦同士の一騎打ちが見たい、と」

「そうだ! それだ!」

「では、ハンプトン・ローズの海戦に……」

「だーかーらー、モニター艦とか初期装甲艦じゃなくてだな」

「人間たちが第二次世界大戦と呼んでいる時代の戦艦が良いんですね……」

「そうだよ。

 やれば出来るんじゃないか」


 天使は頭を抱える。

 第二次世界大戦における海戦で、戦艦同士の一騎打ちとはいかないまでも、殴り合いとなれば数は少ない。

 大体あの時代は、航空機と電子兵装の差が物を言った。

 レーダーや偵察機が敵の位置を察知し、準備をして待ち構える。

 航空機や小型艦からの魚雷で足を止めて、速度が落ちたり舵が壊れた敵を袋叩きにしたりする。

 それに対し

「そういうの無しで、戦艦同士の殴り合いをだな」

 とか言って来やがった。

 無いぞ、そんなロマン溢れる海戦なんて。

「無ければ作れば良いだろう」

 全知全能とは言わないが、相当の能力を持っている神は事もなげにそう言う。

 こうして天使が頭を抱える中、神は海しか無い異世界を作り、そこに戦艦を召喚する事にした。

「お前が天の声として審判(ジャッジ)するようにな」

 という命令も込みで。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ここはどこだ?

 俺は死んだ筈では無いのか?」

 沖縄に向かう途中、アメリカ軍の空襲を受けて爆沈した筈の戦艦「大和」艦長・有賀幸作海軍大佐は、まるで何事も無かったかのように海上を疾走する艦上にあった。

 否、異常はある。

「伊藤長官がどちらに居られる?」

 座乗していた伊藤整一第二艦隊司令長官の姿が無かった。

 その他、第二艦隊のスタッフも姿が見えない。

 他の艦橋要員はそのまま存在しているのに。

 更に一緒に沖縄に向かっていた筈の僚艦も見えない。

 大分沈められた筈だが、駆逐艦がまだ3隻程残っていたと思った。

「艦の様子を知らせよ!」

 艦長の命令で、点検作業が行われる。

「主砲一番、二番、三番異常有りません」

「副砲一番、二番、三番、四番異常有りません」

「待て、その時点で異常だろ!」

「は?」

 戦艦「大和」は航空機の時代に対応する為に改装され、舷側の副砲2基は撤去されていた。

 代わって高角砲や対空機銃が増設された筈なのに、いつの間にか建造当時の姿に戻っている。

 更に報告が入る。

「こちら格納庫、観測機及び偵察機が一機もありません」

「こちら通信室、どこにも繋がらないどころか、機器が動作しません」

 有賀は違和感しか感じない。

 自分の目でも見たが、艦橋の巨大測距儀に増設された電探(レーダー)が消えているのに、誰もその事を指摘しないのだ。

 まるで竣工当時の、そんなものは無かった時のような反応だ。


『あー、聞こえますか?』

「誰だ?」

「艦長?

 何か仰いましたか?」

「何か声が聞こえただろう?

 諸君には聞こえなかったのか?」

「いいえ」

「誰も私語等しておりません」

『艦長、信じられないかもしれないが、君にしか私の声は聞こえていないよ』

「貴様は一体何者だ?」

「艦長?」

「何を言っているのですか?」

 訝しがる艦橋要員。

 有賀艦長は艦橋を出て、人気の無い場所に移動する。

「貴様は一体何者だ?

 この状態は何なのだ?

 知っているなら教えて欲しい」

 それに対し天の声が回答する。

『いきなりこんな事になって混乱していると思う。

 私は神の使徒である。

 神の……思し召しにより、その戦艦ヤマトは日本代表として選抜された』

「代表?

 選抜?」

『そうです。

 これから全世界の戦艦を集めた一騎打ちの大会、”World Battleship Contest”通称”WBC”が開かれます。

 ヤマトはその日本代表なのです』

「ふざけるな!

 我々は沖縄で戦う戦友の元に行かねばならぬ。

 そんな遊びに付き合ってられん」

『あー、残念ですが、貴方たちは既に死んでいるのですよ。

 覚えているでしょ?

 のべ数百機による空襲を受けて、ヤマトは転覆、爆発したのですよ。

 今貴方が乗っているのは、神の力によって復元された艦です。

 神の力によって、貴方の肉体と魂もこちらに来たのですがね』

「信じられない……」

『そうでしょうとも。

 本来我々は下界に干渉しないのですから。

 あの方の我がままに突き合わされるこちらもいい迷惑で……』

「は?」

『こちらの話だ。

 気にすんな。

 気にしたら負けだ』

「もう大日本帝国はほぼ負けているがな」

『おお、これは上手い事を言う。

 まあ切り替えられたようだし、頑張ってね』

「どうせ逃げる事は出来んのだろ?」

『そういう事~』

「分かった。

 では生前出来なかったアメリカ戦艦との一騎打ちで、我が『大和』の実力を発揮してみせようぞ」

『あー……いきなりアメリカなんて無理ですよ』

「どういう事だ?」

『日本代表は、これからアジア予選に出て貰います』

「予選だと?」

『そうでーす。

 まずはアジアを勝ち抜いてから、準決勝・決勝戦へと進んで貰います』

「ふざけるな!

 やはりお遊びではないか」

『あの方のお遊びなのは否定しません……。

 召還された方々には迷惑なのは、天の声としてもお詫びします。

 ですが、こっちだって逆らえないんですってば。

 そして、そっちだって逃げ出せないんですってば』

「やるしか無いという事か……」

『もう開き直ってやっちゃいましょうよ』

「こんな迷惑な事に、部下を巻き込んでしまうとは……」

『一応ですね、砲弾が命中して戦死しても、翌日になれば生き返りますから』

「何だと?」

『あと燃料も、砲弾も、どんなに使っても翌日には満タンになっています』

(やはりお遊びでしかないようだ……)

 有賀艦長は、神の遊びに巻き込まれた我が身を呪う。

 しかしどうせ逃げられないなら、戦うしかない。


『覚悟が決まったようですな』

「ふん」

『余り天に向かって失礼な態度を取りなさるな。

 じゃあ、アジア予選始まりまっせ』


 そうして艦長の手に一枚の紙が降って来た。


 アジア地区予選:

・大日本帝国

・大清帝国

・タイ王国

・オーストラリア

・ソビエト連邦


 この5ヶ国で争われるようだ。

(にしても、清だと?

 何十年前に滅亡したと思っているんだ?

 まあ、今の志那に戦艦等無いのは確かだが……)

 そう思う有賀を、下士官が呼びに来る。


「艦長、敵艦……らしき艦を確認しました。

 ただちに昼戦艦橋に戻って来て下さい」

(来たか……)


 こうして艦橋に戻り、双眼鏡でその艦を見る。

 皆が不思議そうな表情となっていた。

「艦長、あれはどう見ても……『定遠』ではありますまいか?」

「あれは敵と看做して良いのですか?」

 全員が事態を呑み込めていない中、有賀は艦長として命令を出さざるを得ない。


「全艦に告げる。

 本艦はただ今、異常事態に遭遇している。

 それを説明するのは後にするが、とりあえずこれから目の前に現れるのは全て敵だ。

 本艦は沖縄には行けない。

 どうして行けないか、記憶をたどってみれば思い出す筈だ。

 だから、我々は今置かれている状況を打破する。

 もしかしたら、全てを克服したならば、我々は元の状態に戻り、再び戦友たちの元に向かえるかもしれない。

 まずはそれを信じて、目の前の敵を沈めるべく戦う事だ。

 砲戦用ー意!」


 有賀が見るに、全員が意味不明な状態で混乱していたが、流石は大日本帝国海軍軍人、戦闘準備が下令されるとキビキビと動き出した。


(そういえば、優勝したらどんな褒美があるのか聞いていなかった。

 天の声とやらに教えて貰わんとな)

 そう思いつつ、有賀も戦闘指揮に入るのであった。

またしても、どのジャンルにしたら良いのか分からない小説を作ってしまいました。

公式キーワードにも適当なのが無いし。

異世界なんでローファンタジーにしましたが、基本戦艦同士の殴り合いです。

ローファンタジー追い出されて流浪するかもしれませんが、よろしくお願いします。

(歴史じゃないし、こんな日常あるわけないし、魔法とか出て来ないし、うーむどこに属したら良いものやら)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] レーダーのないヴァンガードやアイオワなんて・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ