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ペレの献身


 類は固まっていた。


 先程からずっと汗が止まらない。


 それは何故か。


 それは、




 そこら中、苦手な蛇で埋め尽くされているからだ!!




「お前か。指輪の女」



 回転式の椅子に座った人物に話しかけられたが、それどころではない。


 すぐ隣でニシキヘビのような大蛇が、先程からずっと類をギョロリとした双眼で睨んでいるのだ。


(蛇を放し飼いにするなぁ――!!)


と、大声で叫びたい。


(カゴとか網とか何でもいいから入れといてよ!!)


 ちょっと近寄られただけでひぃっとなる。セシリアの飼い蛇のマリアに巻き付かれたトラウマがフラッシュバックする。


「俺を無視するとはいい度胸だな、女」


 そこはかとなくペレに似た、それより少し低い声が前方から聞こえる。


 ニシキヘビを警戒したまま、類はそろりとそちらに目を向けた。


 黒のアイラインで囲った大きな吊り目は、真っ直ぐに類の方を見ている。ウェーブした長い緑っぽい髪は下ろされていて、まるで大量の海藻が体に張り付いているようだ。


(こ、これが『オルム』······? 蛇じゃないんだ。普通の人間みたい)


 ペレの息子。らしいが。


(全然似てない)


 第一印象に対する感想はそんな感じだ。それよりも周囲の蛇が気になって仕方がない。薄暗くて狭い穴蔵のようなこの部屋には、蛇の抜け穴のような大小無数の穴が至るところに空いていて気持ち悪い。


「可愛いでしょ? 僕の婚約者フィアンセ


 隣に立つペレが言う。蛇を気にしている様子はない。これを気にしないなんて正気の沙汰じゃない。


「婚約者?」

「うん。ユリウスの弱み、兼今は僕の婚約者。だから指輪を返して」


 手のひらを上に向けて前に差し出すペレを、ハッと馬鹿にするように、鼻で笑ってオルムは横を向く。


「返すわけないだろ、馬鹿か。戦争は始まったばかりだ」

「だから戦争は関係ないんだって。終わるまでは地界ここにいるからさ〜」

「それより王がお呼びだ。指輪の女をな」

「はぁ!?」


 突然強引に話題を変えたオルムに、ペレは本気で驚いたように声を出す。


「壁を通す条件として、その女を見せろと仰せだ」

「初耳なんですけどっ!? さっきはそんなこと言ってなかったじゃん!」

「そらお前が帰った後に聞いたからな」


 しれっと答えるオルムに、わなわなと震えるペレ。


「無理!! 見せたら絶対宝石箱に入れられるでしょ!!」

「断れば地界ここにはいられない」

「じゃあ出るよ!! 元々来るつもりじゃなかったし!!」


 類は一連の会話を聞いて、王の元へ行くチャンスであると考える。王の元にはレムがいる可能性が高い。


「行く」

「はっ!?」

「王の所に」

「何言ってんの!? ルイ!」


 オルムがクククッと笑う。


「なかなか好奇心旺盛な婚約者だな。どうせそう思ってるのはお前だけだろ?」


 嘲るようにペレを見る。


「おい。案内しろ」


 近くにいた、青い肌に黒い蝙蝠こうもりのような翼の生えた低身長の男? にオルムが命じる。


「いやいや! 了承してないから! ルイ! 駄目だって! ここから出よう!」


 ペレが慌てて類の手を取る。


 それを振り払って、ペレとニシキヘビから離れるように青い肌の男の方へにじり寄る。


「よっぽど嫌われてるな、お前」


 オルムがまたもやクククッと笑う。そして何かに気付いたように類の方を見た。


「ん? ちょっと待て。何か持ってるな?」


 オルムにジェスチャーで招き寄せられた青い男に連れられて、オルムの座る椅子に向けて強制的に歩かされる。


 椅子の周囲には小さいが大量の蛇がいて、そのウナギ漁の現場のような場所に向かわされ気絶しそうになる。


 蛇の群れの前で踏ん張って動かない類に、痺れを切らすように椅子から立ち、数歩歩いて類の目の前に来たオルムは、徐ろに類の着るジャケットの両サイドを持って開いた。拍子でボタンが弾け飛ぶ。


「あ!!」


 ペレがそれを見て叫ぶ。


 オルムは「違うな」と言って、ベストも開く。我に返ってヤバいと思った時には、シャツの胸ポケットから解毒薬が取り出されていた。


(しまった!!)


「やはりな。動いた時に独特な匂いがしたから何かの薬品だと分かった。これは何だ? 何故隠し持っていた」


(ヤバい、どうしよう。何で分かったの!?)


 汗がこめかみや脇に滲む。


 無味無臭だと聞いていたのに、何故見つかったのか。


 少し考えるようにして、オルムは解毒薬を持ったまま類をじっと見る。


「確かお前、ライバルの女を毒殺しようとしたんだったな。俺のこともこれで殺すつもりだったのか?」


 面白いものでも見るように、オルムは類に目を向けている。この男も類より大分背が高い。ペレと同じくらいか。


「残念だったな。毒は効かない。だがその気概は気に入ったぞ」


 クククッとまた可笑しそうに笑って、解毒薬を手で弄ぶようにして再び椅子に腰掛けた。


「王の元へ連れて行く前に派手に着飾らせろ。匂いは女だが見た目が男っぽい」


 青い男にそう命じて、オルムはくるりと椅子を回転させて背を向けた。解毒薬を持ったまま。


(解毒薬がないんじゃ、レムを見つけても起こせないじゃないか!!)


 ペレがオルムに向かって何か喚いている声がBGMのように流れる中、類は絶望する。


 これじゃあ王の元へ行き損だ。


 しかし今無理矢理取り戻そうとして、解毒薬だとバレたり、溢されたりしたら終わりだ。タニアの嘘の報告のおかげで、ただの毒薬だと思われていることが不幸中の幸い。

 

 レムの居場所も定かでない今、このまま王の元へ行き、レムを見つけてから解毒薬を取り戻す方法を考えるしかないか。


 後ろ髪を引かれながらも、類は青い男に付いて部屋を出る。ペレが後から付いてくる。


「何考えてるの!? ルイ! 王の所へ行っても何にも良いことないよ!? むしろ悪いことしかないって!!」


 案の定、部屋を出て少し歩いたところで必死に諭される。


 それは分かってる。


 でも、行くしかない。レムを起こさなければ、天上界は壊滅するのだから。


「それでも行く」

「駄目だよ! 行かせられない!」


 強引に手を引かれる。


「ペレ様、勘弁してくださいよ〜。連れて行かないと私がオルム様に怒られるんですから〜」 


 青い男が少し情けない声で言う。


「オラヴィも知ってるでしょ!? 今王の所には宝石が少ないんだよ! ルイならすぐに一番のお気に入りになって、四六時中王から離れられなくなるよ!」

「『宝石』?」

「『王の宝石』と呼ばれる女たち! 王のコレクション! 美女ばかり集めて侍らせてるの! そのコレクション部屋のことを『宝石箱』って言うんだよ!」

「へぇ」

「『へぇ』じゃないよ!! 危機感なさすぎ!! ここから出るよ、ルイ!」

「駄目だよ!」

「は!?」

「王の元へ行かないと」


 ペレは呆気にとられたように、口を大きく開けた。


「ねぇ、馬鹿なの!? これだけ言っても分からない!?」

「うん、馬鹿だから王の所へ行く」


 完全に呆れたというように、ペレは手を離した。そして少し怒ったように言う。


「何を企んでるのか知らないけど、ルイが思ってるほど簡単に事は運ばないよ? それでも行くの?」

「うん」


 はぁ〜と深い溜息をついてから、ペレは何か考えるようにして、「分かったよ、勝手にしな」と言ってどこかへ行った。


「じゃ、行きますよ?」


 オラヴィと呼ばれた青い男が、タイミングを見計らって類を見上げて声をかけてくる。


 来た時と同じように、しばらくウネウネと迷路のように張り巡らされた狭い道を歩いて、やがて広い通路に出た。いきなりサイズ感が変わる。絶対に巨人用の通路。その端っこを通る。


「巨人族は本当に皆出陣してるの?」


 類はオラヴィに聞いてみる。オラヴィは丸い目を類にチラリと向けて答える。尖った耳、青い肌、黒い蝙蝠の翼。まるで悪魔の容貌だ。それにしては何となく可愛らしい感じはするが。身長は類よりも十センチ以上低く見える。声も少年のように高い。


「皆ではないですが、ほとんどは。まあ大きな戦争ですからね〜。ついさっきまで城に敷き詰められるように大勢いたのが、あっと言う間に飛ばされました」


 あっと言う間に。


(天上界に飛ばされた!? 城に敷き詰められるほど大量の巨人が!?)


 類はアワアワと焦る。先程ペレに言ったようにオラヴィを促す。


「は、早く!! 連れてって、宝石箱に!!」

「物好きですねぇ、あなたも」

「いいから早く!!」



 


「ええっと、これ、着てください」


 衣装部屋のようなところで、棚を漁るオラヴィにドレスらしきものを差し出される。


 両手で摘んでピラリと広げ、ドレスの全体像を見てみる。サイズは丁度良さそうだ。


 ノースリーブのシルバーのロングドレス。


(え。これ着るの?)


 雷帝の後宮でのお目通りを思い出す。


(やだな〜。でも着ないとレムを探せないし)


 仕方ないと諦めて、類は仕切りの向こうで着替えた。靴とイヤリングも渡されたのでそれも身に着ける。


「うわっ」


 着てみて気付く。


 片側の太ももの辺りまでざっくりとスリットが入っていることに。まるでチャイナドレス。


 胸の辺りはドレープになっていて、少し誤魔化されている。


(まさかそれを狙ってこのドレスを選んだとか?)


 若干の被害妄想を抱きつつ、類は仕切りの外に出る。


 目線の先にオラヴィが立っていて、うんうんと頷かれる。


「あとはメイクですが······出来ます?」


 フルフルと首を横に振る。


「困りましたねぇ、私はしたことがないし······」

「あたしがやったげるわ」


 唐突に声がして、そちらに目を向けると扉の辺りからゆっくりと優雅にこちらへ歩いてくる謎の美女が。


(うわぁ。すっごい美人)


 長い真っ直ぐな銀髪を高い位置でポニーテールにして、キラキラ光る水色のスリムなロングドレスを着たナイスバディな美女。


 思わずざっくり開いた胸元から覗くボリュームのある胸に目がいってしまう。


(ダメだ、ダメだ、悲観するな。別にデカいのが良いわけじゃない)


と自分に言い聞かせ、目を逸らす。しかし雷帝あのひとはどうなのだろうとちょっと考えてしまう。


「え? 誰ですか?」


 オラヴィが美女に聞く。


「いやだ、新しい『宝石』よ。“エルナ”。王の一番のお気に入りになる予定よ」


 ウフフッと美しく微笑んで、エルナと名乗る女性は類を見た。


「あたしがメイクしてあげる。貴女もなかなかだけど、一番の座は渡さないわよ。ほら、男はシッシッ。ここは宝石用の更衣室よ」

「言われなくとも出ていきますよ。終わったら来てくださいね」


 オラヴィは良かった、とばかりにすんなりと部屋を出て行った。


 オラヴィが出たのを確認すると、エルナは近付いてきた。類の頭から足先まで余さず視線を這わせると、満足そうに類の頬にそっと手を当てる。


(なんか、シルヴァ様みたい)


 その仕草に馴染みを感じる。ただ、エルナは類と同じくらい背が高い。目が真っ直ぐに合う女性に会ったのは初めてかもしれない。エルナは類を見て妖艶に微笑む。


「綺麗。あたしがさらに魅力的にしてあげる」


 更衣室の端にある鏡台に座るよう促される。


 鏡台の引き出しからメイク道具を出して、せっせとメイクを施されていると、自然とあの時のことが想起される。


(ヘルガを思い出すなぁ)


 お目通りの前にメイクしてもらった時。


 ちらりとエルナを見る。


 その真剣な顔は、女神のように美しく整っている。


「あ、あの」

「何?」

「な、なんでメイクを?」

「······別に? 気まぐれ。いい素材だからメイクしてみたかっただけ」

「······あ、ありがとうございます。助かります」

「どういたしまして」


 にっこりと笑いかけられて、少し気恥ずかしい。


と思っていたら、ブッと吹き出すような音が。


 クックックッと堪えきれていない笑いを漏らしながら、エルナはメイク道具を鏡台に置きながら腹を抱える。


「???」


 訳が分からず、類は唖然とエルナを見る。


「も、もう駄目。ルイ可愛すぎる。全っ然気付かないんだもん。僕だよ」

「え?」


 『ルイ』!? 『僕』!?


 ハッとした。


「ペレッ!?」


 思わずガタンと立ち上がる。


 『気付かない』って、全くの別人なのだから気付くわけがない。変身能力を持っていると知っていても、常に疑っていない限り見破るのは絶対に無理だ。


 『エルナ』はひとしきり笑うと、「あー可笑しい」と言いながら、指で涙を拭って類を見た。そしてわさっとポニーテールの髪を白くて細い両手で掻き上げセクシーポーズを取る。


「どうしても譲りそうにないからさ。先に潜入してたの。ルイと同レベルの美女になってみた。どう?」

「······え? 私と?」

「うん。あ、自覚ない?」

「うん。ない。だって、そんなに胸ないし」


 女っぽくもないし。ペレだと思うと余計に恨めしい。じーっとその大きな胸元を睨む。


「あー確かに。そこは勝ってるかも」


 むか。


「ウソウソ! 胸がなくてもルイは可愛いから〜」

「フォローしてくれなくていいから」

「だって怒ってるじゃ〜ん」

「怒ってないよ」


 そっぽを向いていると、両肩を押されてポスンと再び椅子に座らされた。


「メイクの続きするから。じっとしてて」


 仕方なく、大人しくメイクを施されるが、何となく落ち着かない。

 じっと顔を見られている気がするし、見た目が女でも中身は男だと分かっているので、触れられるのは嫌だ。

 しかし中途半端にやめると自分ではやり方が分からないし、王にここを追い出されても困る。


 ここは何とか我慢しようと、両拳を握り締める。


「ねぇ、そろそろ何を企んでるのか教えてくれない?」


 しんとした部屋で、構えていたところに不意に話しかけられて、思わずドキリとした。


「······」

「教えてくれないと協力出来ないし」


 唇に筆で紅をさされながら、類は何と答えるべきか考える。


「協力······してくれるの?」


 ペレが協力してくれるならすんなり事が運びそうだが、果たして言っても良いものか。言えば逆に邪魔されそうな気がすごくする。


「ルイが手に入るなら何でもするよ」

「······だから、それはナシって言ったじゃん。それなら協力してくれなくていい」

「何を今更。散々こき使っといて。僕はルイを手に入れるつもりだから。ルイの望みを叶えたら、地界を出て旅に出よう。いろんなものを見せてあげるよ」

「······出ないってば」

「じゃあ一人でやるつもり? オルムから魂を取り戻せるの? 自分だけの力で。でもさ、何で王のところへ行くのかは分かんないんだよね〜。それを教えてよ」

「······教えたら邪魔されそうだから言えない」

「あのね。何のために僕がここに潜入したと思ってんの? 協力するために決まってんじゃん」

「協力してくれてもペレのモノにはならないよ。それは絶対だから先に言っとく」

「恋愛に絶対はないから、まだ分からないよ」


 あっさりと躱されて、「はい、終わり」とポンと肩を叩かれる。


 鏡に映った自分の姿を見る。


 そこには、どこからどう見ても女にしか見えない顔が映っていた。


「で、作戦は?」


 ワックスで軽く類の髪を整えながらペレが聞いてくる。


「······まだ迷い中」

「邪魔しないってば」


 いや、雷帝を地界ここへ呼び出すと言ったら邪魔しそうだ。


 ペレにとっては息子であるオルムと雷帝が戦うとなると、やはりオルムに味方するのだろうか。

 時間はないが、焦ると事を仕損じそうで、もう少し考えることにした。



 


「あ、終わりました? あーすごい。めちゃくちゃ王様好みです」


 更衣室から出ると、オラヴィが絶賛するように、類を見て言った。


 それを聞いたペレ(エルナ)がハッとした顔をする。


 しかし何も言わず、黙ってオラヴィに近付く。


「王の所へ行くの?」

「はい。ご挨拶に。貴女もまだですか?」


 オラヴィはペレに言う。


「ええ。一緒に行くわ」


 にっこりと笑うその表情、仕草、言葉遣い全て、完璧に女だ。


 さっきまで話し方が完全にペレだったのに、今は『エルナ』だ。


(混乱したりしないのかな)


 類はそれを見て、自分には絶対に無理だと思った。



 やがて、重々しい黒を基調とした柱の多い空間が現れた。サイズは巨人用。


 その重厚な雰囲気に、思わずゴクリと息を飲む。空気が一気に重くなったように感じる。類は霊感などないが、ビリビリと背筋に悪寒が走り、『ここから逃げ出せ』と体全体が訴えているように、足が重い。


「震えてるよ。大丈夫?」


 巨大な黒い鉄の扉の前で、隣に立つペレが声をかけてくる。


「大丈夫」


とだけ答えて、すっと前を見据える。


 ここを乗り越えなければ、任務を完遂することは出来ない。


 オラヴィが「王様。新しい宝石を連れてまいりました」と言うと、ギギギ······と重厚な音を立てて、二枚の扉が内向きに開いた。


 中に目をやった途端、凍りついたように足が全く動かなくなった。


 理由は、扉の両隣に立つ巨大な男たちを見たからだ。15メートルはありそうな巨体。重そうな甲冑を着て、それぞれ正面を見据えながら突っ立っている。


 ペレの能力で無理矢理巨人にされた住民たちとは、迫力が違う。体も一回り以上大きい。兵士なのか、しっかりと筋肉がついてガタイが良い。


「······っ」


 震えて足が動かない。こんなのに攻撃されたらひとたまりもない。


「ルイ······大丈夫だよ。僕が絶対守ってあげるから」


 そう耳打ちされて、少し安心してしまったのに情けなさを感じる。しかしペレがいなければ、潜入は無謀であると実感してしまう。自分から王の元へ行くと言った癖に、結局ペレに頼っているのは本当に情けない。


 雷帝に『ペレを最大限利用しろ』と言われたが、雷帝はペレの力を信じているのだ。だから自分を任せた。


 せめて、王の前では堂々と振る舞わなければと思い、ギュッと拳を握る。なるべくペレを頼らなくて済むように。


 覚悟を決めて部屋の中へと進む。


 類の様子を見ていたペレとオラヴィも歩を進めた。


 オオオオオオ······という効果音が聞こえる気がする。 


 部屋の奥の玉座に座る大男を見て、またもや類は震撼した。


(死ぬかもしれない)


 黒い短髪に口髭、長い顎髭をたくわえた初老の巨人の目を見てそう思った。


 その目は、狂気に満ちていた。



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