表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

第二十話「勝負よ」

「……午前、〇時五十五分」

スマホのデジタル時計を見て、一人呟く。

識知も今、恐らくは決闘に備えて準備をしているのだろう。

アタシは動きやすい服……ジャージの上下に着替え、ベッドに横になっている。

リジェクトさんは、まだ戻っていない。

パトカーと追いかけっこをしているらしい。

何してるんだろう、あの人……。

「……」

アタシは識知が好きだ。

けど、アイツは常にアタシやリジェクトさんから、一定の距離を置いている。

恐らく、本人も無意識の内に。

基本的にさん付けで呼ぶし、絶対アタシの好意に気付いてない——いや、目を逸らしている。

何でそうしているのかは、何となく理解できる。好きな人に、一途でありたいのだろう。

……いや、それもあるだろうけれど。

それよりも、人を殺した現実から目を背けない為……逃げない為だろう。

アタシからの好意はどうなる、とは思うけど。

……そろそろか。

アタシは目を閉じる。

——目を開けると、目の前に広がるのは、野球等で度々使われる、ドーム型の球場。

「……」

そして、私と向かい合って立っているのは……。

「識知——⁉」

アタシの、想い人だった。

「山田、さん……」

アタシは、思わずその場を見渡す。

奴は……『管理人』は、球場の中心、地上から目測で十メートル程の空中で、剣を組み合わせた椅子に腰かけて嗤っていた。

「ようこそ皆様。今宵の闘技場へ」

『管理人』の口から、もう何度目かの、決闘の挨拶が並べられる。

でも……ちょっと待ちなさいよ。

「管理人‼これはどういう事なの⁉」

アタシは、思わず叫んでいた。

「どういう事、と申されましても。山田様。あなた様は既に複数回、決闘をご覧のハズでは?」

「ええそうよ‼アタシは、そこの識知と違って、この悪趣味な決闘は、もう何度か見てる」

「……では、説明は必要無いのでは?」

「違うッ‼」

『管理人』はとぼけ、困ったように眉を寄せて「やれやれ」というジェスチャーをする。

コイツ……‼

「どうして、識知がまた選ばれてるのよ‼今までの決闘じゃ、少なくとも連続で選ばれる事は無かったじゃない‼」

そう、アタシが識知に言った言葉は、少なからず根拠があった。

けど、それじゃ薄かったのだろうか。

いや、そうじゃない。

アタシを含め、今残っている識知以外の人間は、少なくとも、今までは決闘に出ていない。

それなのに、何故……くじ引きでもしているっていうの?

「……お答えしても良いですが、それを訊いて、如何するおつもりですか?」

「――‼」

そう、か。分かった。分かって、しまった。

他二人と識知とアタシ、そこに違いがあるとすれば恐らく……リジェクトさんとの関係性だ。

彼女の話を全面的に信じるとするなら、『管理人』にとって、リジェクトさんと協力関係にあるアタシと識知は、鬱陶しい存在だろう。

その二人の内一人を、自らの手で殺すんじゃなく……殺し合わせる事で、労せず戦力の削減と、あわよくば生き残った方の戦意も削ごうと、そういう事だろう。

「下種が……‼」

「や、山田——さん」

アタシの呟きに、識知は青ざめた顔で話し掛けてくる。

あの顔……アイツ、また迷ってる。

大方、『山田を殺せば、桜を蘇らせるのに一歩近づく。でも……』って、自分の中で答えはとっくに、あるだろうに……。

その答えを出すには、アタシとアンタは、助け合い過ぎたかな。

アタシは識知から視線を外すと、もう一度、『管理人』を睨みつける。

「……」

『管理人』は、何も言わずに、ただ退屈そうに頬杖をつきながら、アタシと識知を見下ろしている。

「識知。アタシは言ったわよね」

「……?」

大丈夫。アンタはきっと、願いを叶えるわ。

だって、これからも、リジェクトさんが味方にいるもの。

そして桜を蘇らせて、幸せに……生きなさい。

「識知、アタシとアンタの、決着を付ける時が来たわね」

「なっ……⁉」

アタシは識知へ向き直り、前に一歩踏み出して、言う。

こうでもしなきゃ、アタシの決意が鈍ってしまう。

「アタシがアンタを殺して願いを叶えるか、それとも、アンタがアタシを殺して、桜を蘇らせるか。勝負よ」

「ま、待って……待ってよ、山田さ」

「問答無用‼アタシはアンタを殺すわ。そして……そして、幸せになるの」

アタシは、涙で滲む視界に移る、自分の事を眼中に入れてすらくれない想い人を、一方的に振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ