第十八話「疑問」
「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです、リジェクトさん」
「なら良かった。作った甲斐があったというものだ」
「……」
食事を終えた俺達は、それぞれが思い思いに休日を過ごした。
その日、山田はやけに明るく振る舞っているように見えた。
リジェクトはそんな山田に、特に違和感を抱いているような様子も無く、鎧をガシャガシャと鳴らしながら家事をしている。
山田の様子に関しては、先程の言葉を聞いた俺の早とちりなのだろうか?
というか、リジェクトはあの鎧を頑なに脱ごうとしないな。
「……」
そして俺はといえば、山田の様子がとても気になり、スマホを弄っている山田を、常に視界に入れながらくつろいでいる。
「気付いてるわよ」
「……」
「アンタよ、識知。というかアタシとアンタ以外に、人居ないじゃない。今」
バレていた。
何というか、少し恥ずかしい感じがして、咄嗟に目を逸らす。
「……見てないよ」
「嘘下手か。……嫌でもないし、別に、見てても良いわよ」
山田は素っ気なくそう言うと、先程までと同じようにスマホを弄り始めた。
良いのか。
「……山田さん、思い出したくなければ、言わなくても良いんだけど」
「うん、なに?」
「山田さんを襲って来た男、名前とか分かる?さっき来てた通知音の生存者の中に、あの男が居るかもしれない」
「……たしか、『忘彼 喪憶』って言ってた」
「『忘彼 喪憶』……?」
その名前を聞き、俺はスマホの異能アプリを、少し躊躇いながらタップし、通知を見直してみた。
書かれている名前に、『忘彼 喪憶』という名前は存在していない。
「名前、無いね」
「そうみたいね。……死んだのかしら?」
そうなのだろうか。俺が戦った時は、文字通り殺しても死なないような奴だと感じたが……。
何にせよ、奴はもう参加者には居ない。
肩透かしを食らったような感覚になりながら大きなため息を吐く。
だが、別の問題もある。
「他の生存者の能力が、さっぱり分からないわね」
そう。奴……喪憶とは、曲りなりにも一度戦った事があるが、現状生き残っている俺と山田を除いた二人の能力に、さっぱり見当がつかない。
「まあ、リジェクトさんと俺、山田さんの三人で組んで戦えば、そうそう負けないとは思うけどね」
「……そう、ね」
「……?」
さっきから、山田は様子が少し変だ。
やはり、あの通知が何かあるのだろうか?
「山田さん……さっきから少し変だよ?
一体どうしたのさ」
訊かない事には何も変わらない。
桜の時みたく、違和感や疑問を捨て置くのは、もうしたくない。
山田は俺の問いに対し、どこか影のある笑みを浮かべると、「気のせいだ」と言った。
どこか無理をしている様子のその笑顔に、俺はそれ以上突っ込んで質問する事はできなかった。
後で、リジェクトにでも相談してみるか……。




