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第十五話「始めようか」

「山田さんはどこだ」


この男と必要の無い会話をするつもりは無い。


早いところ、山田を返してもらう。


しかし、俺の考えを見透かしてなのか、男は俺の質問に答えなかった。


「質問に答えたらどうだ?」


「僕はね、誤君。君が桜さんと仲良くしていたのが気に食わなかった。」


「……なぜここで、桜の名前が出て来る」


「桜さんはどうして死んでしまったんだろうね。あんなにも優しかったあの人が。


……何?


「お前、どうして桜の事を知っている⁉」


桜が死んだ事は同級しか知らない。


担任から、口外するのは禁止されていたし、それを守らせるほど、アイツは皆から慕われていたはずだ。


「さぁね。どうしてだと思う?」


こいつ……!


いや、落ち着け。


たしかに無視できない言葉だが、今は山田だ。


俺は今、山田を助けに来ているんだ。


「お前の挑発に乗ってやる気は無い。山田さんの居場所を教えろ」


「しょうがないなぁ。言わないと分からないかい?」


男はため息を吐き、両手を拡げて言う。


「『お話しようよ誤君』って言ってるんだよ。僕はさ」


……断れば、山田の命が脅かされるかもしれない。乗るしか、無いか。


「……分かった。『お話』してやるよ」


「そう来なくっちゃ」


男と俺はその場に座り、数秒の沈黙の後、男は口を開いた。


「そういえば誤君。君はどうしてあの時、桜さんからのメッセージに反応してあげなかったんだい?」


「……いつの事だ?いや、それよりどうして、俺が桜からのメッセージを無視したと知っている?」


「どうして……って。そんなの、そのメッセージを送ったのが、僕だからだけど?」


「——は?」


何だ、なんなんだこの男は。


「それは、どういう意味だ?」


男の言葉の意味を測りかねて尋ねた俺に、男は嗤い、続けた。


「僕が桜さんを殺したんだよ」


その言葉を聞いた瞬間、俺は持ってきた包丁を取り出し、男へ飛び掛かっていた。


「おまっ……お前が‼桜を殺したのか‼」


馬乗りになった俺は、男の喉元へ包丁を突き立て、引き抜き、また突き刺し……。


五分ほどして、息が上がりきった俺は包丁を投げ捨て、横向きに倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……」


殺した。桜の仇を。この手で。


俺は横向きに倒れた身体を動かし、仰向けになる。


「……何をやってんだ。俺は」


山田の居場所を聞き出せなかった。


警察にでも行くか?


純粋な誘拐事件だ。行けばきっと助けてくれる。


そう思いながら、俺は身体を起こしてスマホを取り出してその場を後にしようとする。


「あれ、逃げちゃうの?」


その時、俺の後ろ……男の死体以外には何も無い所から、ついさっきまで聞いていた声がした。


「ッ——⁉」


何⁉殺したはずだ、確実に。


「『殺したはず』って思ってる?」


「お前、どうして——」


俺が振り返ると、さっき殺したはずの男は、ゆっくりと身体を起こした。


「さあねぇ。どうしてだと、思う?」


「……。分からないな。だが」


だが、これなら……。


これなら、山田の居場所を吐かせる事ができる。


「それじゃ、そろそろ始めようか」


そう言いながら、男は構える。


「……ああ」


殺し合いが、始まった。

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