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第十三話「返信あり」

「……。すみませんリジェクトさん。もう大丈夫です」


暫くして、小さく溜息を吐きそう言いながら痛む部分を庇いつつ立ち上がる。リジェクトの言う通り、俺の手が汚れている以上、もう下を向いて塞ぎ込む訳にはいかない。


今までとこれから、俺は俺の行動の結果全部を背負い込んで、その上で目的を達するんだ。


「そうか。なら良かった」


リジェクトは、未だそこにあり続ける男の遺体に軽く一礼すると、視線を外して俺の方を向いてそう言う。


うん。生きていて良かった。素直にそう思う。


「改めてお礼を言わせてください。リジェクトさん。助かりました。ありがとうございます」


ズキズキと身体中が痛むが、この痛みは生きている証だろう。甘受するしかない。


「でも、よくここだって分かりましたね。留守番電話に繋がっていましたけど……」


「うん?あぁ。実は、私は君が電話をかけてくれたからここに来れた訳ではないんだ」


「え?」


どういうことだ?まさか呑気にお散歩でもしていて、偶然さっきの場面に出くわした訳でもないだろうに。


「じゃあ、どうしてここに?」


「それなんだが……。管理人が君の家に訪ねてきてね、そこでちょっと交戦していたら、『あそこで識知さんが戦っていますね。加勢しなくて良いのですか?』と言われ、向かってみれば君が劣勢だった。という訳だ」


「ちょちょちょ……ちょっと待って下さい」


今何て?『交戦していた』って言ったか?


家とか壊れてないだろうな?!


「ん?ああ。心配するな少年。どうせ明日には元通りになるんだ」


「そういう問題じゃなくって——いや、そういう問題か……?」


まあ、家が損壊していたとしても元に戻るなら良いか。どっちにしても俺は今日は学校に行くほど体力が残っていない。


「とにかく帰りましょう。ここを無関係の人に見られたら大変だ」


「そうだな。明日にはなれば関係無いが、今日はあと十数時間ある。帰ろう」


リジェクトとそう言い合い、遺体に軽くだが手を合わせて家路につこうと——


「そういえば少年。少女にも連絡はしたんだろう?返事は?」


「いや、多分授業中か何かで返って来てないですよ」


そう言いながらも、俺は一応スマホのディスプレイを点けて時間を確認する。お、一時間目終わってるな。


「……返答ありか。どれどれ——」


山田と俺のトーク画面には、俺の『最寄り駅近くで能力者に襲われてる』という文言。そして最新の山田からのメッセージは——


「どうかしたのか、少年。緊急事態か?」


俺の表情から、嫌な空気を感じ取ったのだろう。リジェクトが真面目な表情と声で問いかけて来る。


山田からのメッセージは——。


「『明日の昼休み、学校の屋上に一人で来い』って、来てる……。リジェクト、これはマズいよな、確実に」


俺が画面をリジェクトに見せた瞬間、リジェクトは黙って、大きくうなずいた。


「……恐らく、そこで殺し合いをするつもりだろうな。わざわざ明日を指定している所を見るに、このメッセージの送り主も手傷を負っているのだろうが……」


「ならすぐにでも——」


「落ち着け、少年」


会話をとっとと切り上げ、学校に向かおうとする俺の肩を掴んでリジェクトは言って来る。


「何で止めるんです‼山田が危ない‼」


「落ち着け、と言っている。今行ったとして、メッセージを送った輩が学校に居るとも限らない。更に君をどこかで見ていたり目撃した場合、警告無しに少女が殺されてしまうこともあり得る」


俺の目を真っ直ぐに見て冷静にそう言うリジェクトはしかし、かなりの殺気を放っていた。


「り、リジェクト……?」


「私は、こういう輩が大嫌いでね。だがここで感情的になっては相手の思う壺だ」


「……それはそうでしょうけど——!!」


「それに今の君では、仮に一対一になったとしても、その負傷では勝てないだろう」


「……リジェクトさんは、一緒に戦ってはくれないんですか?」


少し、ほんの少しだけ冷静になった俺は、思わず忘れていた敬称をつけてそう言ってしまう。


「……すまない。だが色々と動いてみようとは思っている。少女を捕えている輩と君が戦ったとして、勝敗如何や交渉で少女を返してくれるとは考えにくい。もしそうなってしまった場合に備えなくてはいけない」


「たしかに。でも、具体的にはどうやって……?」


「願いを叶えて来る。その為に、また管理人と会わなくては。気は進まないがね」

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