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ハジジャンの構造  作者: 三木はじめ
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第1章 「消された三面、13版」

二十一世紀初頭、東洋にハジジャンと言う名の怪物が徘徊していた。 

ハジジャンとは何者なのか? 何処から来たのか? 何の因果で発現したのか? ハジジャンの正体或いは素性、その発生のメカニズムなどはいずれ明らかになるが本章よりの数章は発生前夜と括って、当時、比較的に早い時期にハジジャン発生の兆候に気付き始めていた一部の人々の行動を追い人類が初めてその化け物と遭遇し驚愕し狼狽しいかに反応したかに至るまでの経緯を語り部の私が知り得る限りに置いて述べる事にする。


 時は一九九×年十二月某日深夜まで遡る。所は都内某所の某室内。

薄灯の中、突然の一本のダイアル式固定黒電話の呼び鈴がしじまを切り裂く。

リリリリーーーーン

この無機質な神経を苛立たせるけたたましい呼び鈴の音から本編は始まる。


今は何処の誰とも知らぬ何者かが受話器を取った。

男A「はい、河嶋ですが…」と低くしゃがれた声で答える。

男B「河嶋様でございますか、私、五十嵐でございます。夜分お休みのところ、大変恐縮ではございますが、至急ご報告すべき事態が発生しまして…」と応える相手はその上擦った早口からかなり動揺している様子が窺い知れる。


男A「…」

男B「実は、た、ただ今、あ、あけぼの機関から緊急連絡を受け取りましてそれによりますと明日付けの東西新聞十三版に由々しき事態が発生しております」

男A「なんだと! なんだ、その十三版と言うのは?」


男B「はい!はい。十三版と申しますのは東西新聞東京本社内で印刷されます地方発送分でございまして中部北陸信越東北方面に送られる早刷り朝刊でございます。この後、首都圏用に十四版が印刷準備中との事です。尚、ちなみに彼らの業界では十三版には夕刊がなく統合版と呼ばれております。対して十四版には夕刊もありますのでこちらはセット版と呼ぶそうです」


男A「ピーマンな話をするな。要点を言え、要点を」

男B「はい。失礼致しまた。その十三版社会面に例の変体アミノ酸化合物と思われます記事が新華社電扱いで載っておりまして」

男A「何‼」


二人の間に暫しの沈黙が起こる…。

ままして、男A「分かった。至急その十三版を回収処分し十四版と共に記事の差し替えをして刷り直しさせるよう手配したまえ」

男B「とおっしゃられましても東西新聞は全国紙でございまして部数も日本一・二を誇る大新聞ですので」

男A「構わん、刷り直しさせたまえ」

男B「…」


男A「五十嵐君、君は忘れたのかね? 何のためにバブル経済を引き起こしそしてそれを潰したかと言う事を。それもこれも全て国民の目をそちらに向けさせないためだったろうが。とにかく今は時期が早すぎる。我々自身、奴らが善玉なのか悪玉なのかまだ掴みきれていない現段階では事を白日の下に晒す訳にはいかんのだよ。五十嵐君」


男B「ですが、戦後この民主主義の世の中で国家権力が報道機関に圧力を掛けます事は…」

男A「まだ、分からんのかね、五十嵐君。誰だね、君を首相にしてやったのは?」

男B「…」


男A「君、何か勘違いをしておるね、圧力ではないよ、圧力では。これは取引だよ、いや、商談だ。君、東西新聞社の社主は大原君だったね。彼はかねがねJR旧大阪駅跡地を欲しがっていると聞いていたが… 君の力で便宜を図ってやりたまえ。それ位はできるだろう。五十嵐君。私は明日の朝刊を楽しみにしているよ。では、お休み」

 


かくして、河嶋と呼ばれる今はまだ謎の人物の思惑宜しく翌日付東西新聞十三版は世の中から完全に抹殺され新たに刷り直しされた十三版・十四版が翌朝、何も知らない知らされない平和で安穏な国民の手々に届けられた、

かのように思われた。


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