序章 「私は恥を忍んで本編を記す」
初めに恥があった。
いや、初めから恥はあった。
それはアダムが禁断の果実を食し失楽園したその日からか?
或いは猿が始めてパンツを穿いたその時からか?
恥は我々人類と共にあった。
そして人類は世代を重ねる度に時代を繰返す毎に
飽きる事もなく性懲りもせず恥を掻いては掻き捨てて来た。
我々人類の歴史は恥の掻き捨ての歴史であると換言しても決して過言ではない。
が、しかし、そんな掻き捨てられた恥たちは一体何処へ行けば良いのであろうか?
例えば週に一度、日を決めて清掃車が不燃ゴミと共に回収しに来る事など未だない。
或は年に一度、いずれかの寺院でその年の恥供養をする美談など私は寡聞にして知らない。はたまた使用済み核燃料と共に地中深く封印してしまうプロジェクトなどもないはずだ。
彼の方がヴェガスに置き去りにした醜聞の哀れ、
あるいは私が人知れず隠蔽してしまった名折れの不憫、
そしてあなたがあの日あの時あの場所に不法投棄した赤恥の薄幸、
聞くも涙か語るも涙、涙枯れても流浪は続く。
赤恥は哀しからずや、海の青、空の青にも染まずただよう。
成仏も叶わず行く当て所もなくさ迷い続ける幸薄い恥たち。
そんな彼らに約束の地、安住のすみかは果たしてあるのであろうか?
今はまだ誰も知らない…。