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異世界帰りの妹は世界を変革するつもりです  作者: 戒
第二章 それいけニビル探検隊
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第3話「マネするのに一〇年かかるなら普通にトレーニングすればいいじゃない」

――天原衛。


 恵子の真似ですか。

 まあ、恵子の使うレーザーやら、回復魔法やらが使えるようになれば問答無用で強いでしょうよ。


「お兄ちゃんは私の使い魔だから、私の使える魔法は、同じように使えると思うの」


 恵子は、私スゴイこと思いついたと言わんばかりのドヤ顔で熱弁しているが、俺の胸の奥を黒いモヤモヤが去来――いやいや、ハッキリ、スッパリ超絶イヤな予感がする。


「恵子、アヌンナキの力を訓練の足りない人に使わせるなんて前例がないと思うのですが」

「前例なんて私が作ればいいのよ。お兄ちゃん、兄妹そろってダブルレーザーとかやったらかっこいいと思わない?」

「かっこいいとは思うけど」

「なら、決まりね。手を空の方に向けて、変なところに当たったらアブナイから」


 俺は言われるままに両手を空に掲げる。

 まあ、恵子の思い付きは荒唐無稽なので何も起こらずガッカリで終わるだけだろう。


「それじゃ、絶対命令権を使ってお兄ちゃんにレーザーを使わせるね」


 恵子が目をつぶると、俺にも使い魔の契約を通じて、恵子と魂が繋がったことをハッキリ感じ取る。

 恵子の魂から力が流れ込んでくる。

 強い、とても強い魔力。


「いや、魔力強すぎだろッ!」


 恵子が流してくる魔力の量は、俺が扱える魔力の数万倍。

 例えるなら核融合炉から軽自動車に際限なくエネルギーが流れ込んでいるようなものだ。


『指向性光線』


 右手からばかげた量の熱量が放出されるのを感じながら、俺の意識は風に煽られた蝋燭のように消え失せた。




「魔力回路のオーバーロードですね。恵子さんが二週間前にメガトンパンチを使ったときと同じ症状ですわ」


 三時間後。

 あの後、気絶して目を覚まさなくなった俺を担いで恵子は泣きながら家に連れ帰ったらしい。

 サクラさんは、俺ではなく恵子をジト目で睨みながらそうつぶやいた。

 俺とミ・ミカも、ジト目で恵子をにらむ。

 ちなみにメガトンパンチは、恵子がサクラさんをぶん殴って倒したと聞いたときに俺が付けた魔法の名前だ。

 恵子が不満そうだったので仮称としておいたが、ミ・ミカも由香もメガトンパンチと言っているのでこのまま定着するだろう。


「ハッキリ言っていいか?」

「言わないでッ! 私が悪いんでしょ、わかってるわよ。でもでも、最初に思い付いてたときはいいアイディアだと思ったんだもん」


 恵子はうつむき加減で力なくそうつぶやいた。


「失敗を恐れずチャレンジするのはいいけど、出来る出来ないについて、少しくらい考えた方がいいですわ」

「反省してまーす」


 恵子が反省なんて言葉を口にするのは珍しいな、もっとも思いついたら即実行はまたやりそうなので他人が被害を受けないよう俺が注意する必要がありそうだ。


「自分で使って思ったんだけど、恵子は戦闘でバシバシ撃ってるレーザーってすごく強いのか?」


 今度は、他の三人がギョッとした視線を俺に向けてくる。

 驚かれても、空中戦の出来ない俺にはレーザーの有効性なんて想像も出来ない。


「恵子のレーザーは、空中戦では理不尽なくらい強い魔法ですよ、光速で飛んでくるから外れることはあっても避けることは不可能なので」

「衛君が聞いてるのはそういう事ではないと思いますわ」


 サクラさんは、スマホをポチポチしてアニメのロボットアニメの戦闘シーンを俺に見せてくれる。

 動画の中で戦車にビームが命中して一撃で爆発炎上するするシーンが再生される。


「まさか……」

「恵子さんが戦闘で撃ちまくってるレーザーの威力はこのくらいですわ」

「これが光速で飛んでくるのか」


 ミ・ミカが無言でうなずく。

 これを食らっても死なない恵子達の身体がどうなっているのか死ぬほど気になるところだが、それ以上に思ったのは。


「出来るわけないなだろッ!」


 俺は報復のため、恵子のモチモチほっぺをグニグニと引っ張った。


「ゴメン、ゴメン」

「しかし、なんで衛君に高出力レーザーを使わせようって話になったのかしら?」


 俺は、サクラさんに強くなるための手っ取り早い方法として、強い誰かの戦闘スタイルをマネする方法を試してみたことを話す。


「マネか、まあ弟子は師匠をマネして強くなるものだし、その発想自体は正しいですね」

「問題は、恵子と俺とじゃ力の差があり過ぎて参考にならないってことだな」

「なら、私の戦い方はどうですか? 私は簡単な魔法しか使えないのでマネするのも簡単だと思います」


 ミ・ミカのマネか、出来る出来ないでいえば出来ると思うが少し気になることがある。


「ミ・ミカはいつから剣術やってるんだ?」

「剣は五歳のときから振っています。ただ、本格的な戦闘訓練を受けたのは五年前からですね」

「私がニビルに行ったとき色々ゴタゴタがあって、最初の三年くらいは師匠と一緒に山に籠って戦闘訓練受けてたわ」

「俺も一〇年、剣と魔法の修行をすればミ・ミカレベルになれる可能性があるのか」

「その通りですッ! 私と一緒に剣術やりましょう」


 弟子が出来ることにミ・ミカは嬉しそうだが……手っ取り早く無い。

 ミ・ミカの力は、オリンピックで金メダル取れるような才能を持つ女の子が、正しい努力を休みなく積み重ねて培ったものだ。

 マネするには彼女と同じ努力を同じ年数積み重ねる必要があるが、俺が天才である確率は低い。


「マネするのに一〇年かかるなら普通にトレーニングすればいいじゃない」


 ときには役に立つ、恵子のミモフタモナイ発言でミ・ミカのマネしよう作戦はボツになった。


「結論としては人マネで簡単に強くなるのは不可能ってことだな」

「そうとも限りません。要はマネ出来る魔法を覚えればいいんですわ」


 サクラさんは俺の肩をつかみ怪しい笑みを浮かべるのであった。

衛君も今後戦えるようになる予定です。まあ、戦闘以外で活躍の機会は用意しようと思っていますが。

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