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異世界帰りの妹は世界を変革するつもりです  作者: 戒
第一章 アヌンナキがやってきた
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第37話「やった、お兄ちゃんが褒めてくれた」

――天原衛


 空の上で爆弾が爆発したような轟音が鳴り響き。

 黒い何か――おそらく人が森の中に墜落していった。

 木をなぎ倒しながら墜落した人影を追って、俺と岡田さんは森の中に飛び込んでいく。


「落ちたの誰だ? 生きてたら返事しろ~」

「大主教様も殺さないように手加減していると思うが、今の落ち方は危ないな」

「あれで手加減してるのかよ!?」


 サクラさんは、文字通りロケット並みの大加速で空を飛び回っていた。

 種子島で打ち上げているロケットの設備や、消費する燃料と比較したら、それを身一つで再現してしまうサクラさんの大魔力に、尊敬とか憧れとか通り越してドン引きである。

 しばらく森を歩いていると、地面に恵子とサクラさんが倒れ伏しているのが見えた。


「恵子!?」

「大教主様」


 俺達が近づくと、サクラさんが生きてることをアピールするように右手をあげた。

 恵子の方は、死んではいないものの、気絶して意識を失っている。


「岡田君も、衛君も怪我がないようでなによりですわ」

「俺達戦ってないし、てか室内に避難してるのに怪我しそうになるとか、本気で怖いんですが」

「それは……」


 何か言いかけたところでサクラさんは、ゴホゴホと咳込んで血を吐いた。


「大教主!?」

「大丈夫よ、恵子さんにちょっと内臓と脊椎を潰されたけど、今再生中だからすぐに動けるようになりますわ」

「恵子がやったのか!?」

「ええ、戦いの最中に成長して見せた。さすがに、認めないわけには行きませんわ」


 サクラさんは、そう言って気絶した恵子の頭をポンポンと撫でまわした。




 恵子が目を覚ましたのはそれから、二時間ほど経った後だった。

 サクラさんの魔法が強力過ぎて自宅である教会をぶっ壊してしまったため、俺達は近くにある温泉旅館で宿を取とっていた。


「おっ、お兄ちゃん」

「よかった、心配したんだぞ」


 恵子が生きているか確かめたくて、俺は彼女のほっぺたを触って体温の温かさを確認する。


「ご心配をおかけしました」


 珍しく照れているらしく、恵子は恥ずかしそうに口元を布団で隠す。


「それより恵子、身体大丈夫か? 左腕以外に痛いところあるかッ!!」

「別に……特に痛いところはないけど……って左腕!?」


 恵子は自分の左腕を見てギョッとした顔になる。

 そらそうだろう、彼女の左腕は肘から先がキレイさっぱり吹き飛んでいた。

 付け根をきつく縛って包帯でグルグル巻きにして固定しているが、自分のよく知っている女の子の腕がなくなってしまうのは衝撃的な光景だ。


「まあ、大丈夫でしょ。私アヌンナキだから、腕くらいすぐ生えてくるわよ」

「あんまり無茶しないでくれよ。恵子が怪我するの、俺はイヤだからな」

「わかった、お兄ちゃんのためにも怪我しないように気を付けるよ」


 恵子は手を使わずに移動して、猫みたいに俺の胸に身を寄せてくる。


「私とサクラの戦いってどうなった。やっぱり、私、負けちゃったの?」

「恵子の勝ちだよ。サクラさんがお前のこと褒めていたぞ」


 ミ・ミカも由香もムツキも、口をそろえて神様レベルで強かったと評価するサクラさんを、恵子がぶん殴って倒したらしい。

 夜間に超音速で飛び回る超人と神の戦いを俺は見ることさえ叶わなかったが、俺の妹がすごい魔法使いであることだけは間違いない。


「そっか、私勝ったんだ。ねえ、お兄ちゃん、私って役立たずじゃないよね?」

「当たり前だろ、お前みたいな出来の良い妹いて俺は肩身が狭いよ」

「やった、お兄ちゃんが褒めてくれた」


恵子はうれしそうに、自分顔をピトリと俺に触れ合わせてくるのであった。




「麻酔が切れたら痛みますよ。今のうちに腕を再生した方がいいと思います」

「それが、魔法も使えないのよねえ」


 みんなが食事している部屋に案内された恵子は衝撃発言を口にした。

 吹き飛んだ左腕を再生しようにも、魔法が使えないらしいのだ。


「限界を超える魔法を使ったせいで、細胞内の魔力吸収器官がショック症状を起こしたんだと思いますわ」

「それって、大変なことじゃ!?」

「そのうち、治りますわ。筋肉痛と同じで、人間の身体は限界を超えたら疲れて一時的に機能が低下するけど時間経過で回復する、それだけの話です。まっ、今回は私が治しましょう」


 サクラさんはそう言ってくれたが、


「いーらない」


 恵子は治療を拒否して俺の膝の上に腰を下ろした。


「左は利き手だし不便だろ」

「いいの、魔法が使えるようになるまでは、お兄ちゃんに助けてもらうから」


 恵子は俺の胸に体重を預けると、飼い主に甘える猫みたいに頭をこすりつけてきた。


「魔法が使えるようになるまでだぞ」

「わかってる、わかってる~」


 まっ、恵子が帰ってきてからずっとバタバタしていたし、たまには兄貴らしく妹を甘やかしてもいいだろう。




「それでは改めて、星野山連合と天草教の同盟結成記念の宴はじめますわ。皆さんも飲み物は持ちましたか? かんぱーい!!」


 温泉旅館の浴衣に着替えたサクラさんが、五〇〇ミリのビール缶を高々と掲げ乾杯の音頭を取る。

 ちなみに目の前の料理は、旅館に夕飯を注文できなかったので隣町のコンビニまで飛んで買い込んできた。


「いやいやいや、尼さんが酒飲んでいいのかよ?」

「天草教はカトリックの修道会でも、イスラム教でもないから酒飲んでも誰も文句言いませんわ。岡田君も、一般信徒だから問題ない問題ない」


 サクラさんに会ったときからずっと思っていたが、ユルイなこの宗教。

 もっとも、サクラさんと岡田さんは成人した大人だ、酒くらい好きに飲めばいい。


「だがミ・ミカ、てめえはダメだッ!!」


 俺は堂々と自分のグラスに堂々とビールを継いでいたミ・ミカから、ビール缶とグラスを取り上げる。


「ええっ! 私も久しぶりにお酒飲みたいですよ」

「日本では二〇歳以下の未成年は飲酒禁止なんだよ」

「なら大丈夫です。私、実は二五歳なんです」

「そうなのか?」


 ミ・ミカは異世界人のクサリクなので見た目と年齢が一致しない可能性も――。


「ニビルの一年は二〇〇日だから、ミ・ミカは地球人換算で一四歳、飲酒はアウトね」

「恵子の裏切者~。だいたい、未成年飲酒がダメならサクラさんだって見た目未成年じゃないですか」


 サクラさんは自称二〇〇歳以上だが、見た目は女子高生か女子大生、コンビニで酒を買おうとしたら間違いなく身分証の提示を求められる。


「ときどきそれを言われるので、私はちゃんと身分証を携帯しているのです」


 サクラさんが、自分の運転免許証を高々と掲げる。


「偽造じゃないのか?」

「ちゃんと更新に行ってますわ、ここに直近の更新日も書いてあります」


 運転免許証を手渡してもらって確認すると、確かに二年前に正式に更新したゴールド免許だ。

 しかし……。


「あの、生年月日が明治三二年って書いてるんですが」

「サバ読みすぎッて思うかもしれませんが、作ったときに正直に生まれは天明元年だと言っても信じてもらえなかったんですわ」


 もういいっす。

そもそも、大正時代に取った免許を適性試験通ったからといって何事もなかったかのように更新認めないで欲しい。

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