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異世界帰りの妹は世界を変革するつもりです  作者: 戒
第一章 アヌンナキがやってきた
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第32話「ミ・ミカに新しい武器が要ります」

――天原衛


「はいどうぞ」


 由香が、岡田さんのスマホを持ってきて俺に手渡してくれる。

 外国製のプリペイド型スマートフォン、国際ローミング契約で所有者が判らないようにした上で、通話以外のアプリは全て削除、発信と着信の履歴も残さないように細工してあった。

 俺がスマホを返すと岡田さんは、どこかに電話をかけ始める。

 おそらく、相手は俺が監禁されていた時に電話をかけていた相手だろう。


「はい、岡田です。だっ、大主教!? なんで、電話に――はい、スピーカーに、はい」


 電話に出たのが誰なのかわからないが、岡田さんは通話が始まると同時にいきなりダラダラと汗をかき始めた。

 そして、通話相手の指示に従って通話をスピーカーに切り替える。


『こんにちは皆さん、私の名は十門サクラ。今は天草教の大主教をやっております』


 十門サクラと名乗った電話の相手は若い女性の声をしていた。

 普通、教会の偉い人というのは初老の老人なのでとても意外だ。


『この度は、当教会の岡田君が先走った行動を取ってしまい申し訳ありません。私も未成年者を誘拐した上で連絡が途絶えたって聞いたときは、バカなの死ぬのって本気で思いましたが岡田君を殺さないでくれたことは本当に感謝いたしますわ』


 きっ、キツイ、確かに大失態には違いないが直接言うか普通。


「あっ、やっぱり上司の人もそう思いますよね。いきなり誘拐とか頭オカシイですよね」


 サクラの意見に恵子が同調する。

 もしかして、この人って恵子と似たタイプなのか?


『言い訳をさせてもらうと、動画配信で魔法の存在を周知するなんて前代未聞の話だったので、岡田君も情報班も悪しき魔法使いが恐ろしいことを企んでいると勘違いしたみたいです。慎重を期すのも考えものですね』


 前代未聞ですか、まあ岡田さんみたいな普通の魔法使いが、魔法の力を動画で見せて稼ぐなんて考えたりしないと思うので仕方ない面もある。


「大主教、失態についてはどんな処罰でも受けます。ただ、彼らと接触した結果どうしても話を聞いていただきたいことがございます」


 電話口から声が聞こえなくなり、何かを考えているらしき間が数秒流れる。


『わかりました。今回の件は、私の方からお詫びに伺うべきところですが、皆さんに来ていただきましょう。岡田君、旅費は全額出すから皆さんを今富に連れてきてくださいな。あと、責任取って死ぬとかやめてね、あなたが死んでも責任とか取れないし、私には一文の特にもならないから』


 と、言いたいことだけ一通り言ってサクラさんは電話を切った。


「というわけだ、今から今富に行く」

「今富ってどこよ?」

「天草にある今富村だ」


 岡田さんに教えてもらって今富村の場所を検索すると、熊本県に天草諸島下島の西端にマーカーが灯った。


「これまた陸の孤島ですね」

「なんでこんなところに?」


 天草教が秘密結社とはいえ、本部がこんなド田舎にあったらとても不便だと思う。


「本部には大主教様しか居ないんだ。昔は東京に聖堂と事務所があったんだが、インターネットが普及したから連絡も礼拝も全部リモートに切り替えた」

「はっ、ハイテクっすね」


 意外なことに地球の魔法使いは、文明の最先端を追うのが大好きなようだ。




 それからバタバタと今富村に向かう準備が始まる。

 俺は身一つで向かってもいいと思うのだが、泊りになる可能性があるので女の子にはいろいろと用意しなければならないものがあるらしい。

 中でも一番問題なのは、


「ミ・ミカに新しい武器が要ります」


 恵子が折れた剣を持ってそう宣言する。

 ミ・ミカの剣は、サーベルに近い形状の片刃の剣で試合のときはそれを二本背中に差して戦っている。

 俺を助けてくれた時に、岡田さんの魔弾を切り払った拍子に一本を折られるのを俺も目撃している。


「剣については申し訳ない、俺の方で弁償させてくれ」


 剣を負った張本人である岡田さんは、ミ・ミカに対してペコリと頭を下げる。


「ああ、気にしないでください。岡田さんとの闘いは、命の取り合いだったので剣を折られたくらいでピーピー泣いたりしませんよ」

「ちなみに、もう一本もダメなんだって」

「はいそうです、岡田さんの銃弾を切り払ったときに、触れた部分が――これは溶けてるのかな?」


 ミ・ミカが無事だと思ったもう一本の剣を見せてくれる。

 魔弾が触れた場所が半月上に欠け落ちている。

 斬れないことはないが、強度が著しく下がるので実戦で改めて使う気にはなれないだろう。


「さっきは気にしなかったけど、本当にミ・ミカさんの剣を折ったんですね」

「すごいのだ! 岡田とか言ったな、雑魚だと思ってたけどなかなかやるのだ」


 由香とムツキも破壊された剣の断面を見て感心している。

 どうやら、由香やムツキでもミ・ミカの剣を破壊するのは難しいことらしい。


「もしかして、これ伝説の魔剣とかなの?」

「いえ、鉄を叩いて作った大量生産の剣ですよ。魔剣なんて貴重なもの、実戦で使えるわけないじゃないですか」


 ミ・ミカがなに言ってるんですかと言わんばかりに、俺の肩をポンポンと叩く。

 ニビルの武器は、攻撃に使うだけでなく、魔法や魔獣の爪を受けることも多いので、刃こぼれも折れることも想定済みの消耗品扱いらしい。

 ゲームではミ・ミカみたいな高レベルの剣士は魔剣持ちと相場が決まっているのに、なんかイメージが壊れるなあ。


「ミ・ミカの武器を壊すのが難しいのは、彼女の硬化の魔法が強力だからよ」


 硬化魔法は、自分の身体と、肌で直接触れているものに効果を及ぼす。

 というわけで、ミ・ミカの剣は、レーザー砲で撃たれても平然としているミ・ミカの身体と同等の強度を有していたらしい。


「すごいなどうやったんだ?」

「あれは一応俺の必殺技なんだよ。薬室内を真空状態にして周囲の空気を限界まで吸引、圧縮空気の熱で弾丸をプラズマ化するまで熱して発射してる」

「なるほど、あの白い光はプラズマだったのか――ってプラズマ!?」


 岡田さんが、必殺技だと言った理由がわかった。

 ミ・ミカの奴、数千度の火球食らってかすり傷で済むほど硬いのかよ。


「剣なら何でもいいのか?」

「同じくらいの長さと重さであればなんでもいいです。あっ、でも出来れば安いものがいいです。どうせすぐ折れるので、替えがすぐ用意できるものだと助かります」

「意外と注文が多いな。まあ、それなら近くのリサイクルショップで模造刀でも買えばいいんじゃないか」

「えっ、売ってるの!?」


 恵子が驚きの声をあげる。

 俺もびっくりだ、刃引きしてあるとはいえ殴れば人を殺せる鉄の棒なので簡単に買えるものとは思わなかった。


「スポーツ用品扱いだから大きな店なら多分あるぞ、俺も使い捨ての武器が欲しいときは利用してる」




 そんなわけで、岡田さん引率のもと俺達は隣町のリサイクルショップまでやってきた。


「恵子、恵子、剣がたくさんありますよ! しかも、すごく安いです」


 模造刀を見て興奮する女、ミ・ミカ。

 正直、女子中学生が刀見て興奮する姿はすごく目立つので自重して欲しい。


「好きなの買っていいって話ですから、ブランド物のナイフをおねだりしてもいいのでわ?」


 由香が悪魔のささやきをする。

 大きな店ということもあり、隣のコーナーにはブランド物のナイフも陳列されていた。

 値段は模造刀のおよそ一〇倍だ。


「ナイフは長さと重さが足りないですね。私、材質にこだわりないので使いやすい形のものがいいですよ」

「それに日本刀ってカッコいいじゃない、ミ・ミカ使えるか試してみましょう」


 ミ・ミカは恵子に手伝ってもらって二本の模造刀を背中に括り付ける。

 彼女着ているのが普段着にしているワンピースなので刀を背負うとコスプレ感がすごい。

 こうして人気キャラのお約束、刀背負った美少女が誕生したのであった。

今後、ミ・ミカは模造刀を振り回すのですが刀って書いた方がいいんですかねえ?

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