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異世界帰りの妹は世界を変革するつもりです  作者: 戒
第一章 アヌンナキがやってきた
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第26話「お前、なんか嬉しそうだな?」

――天原衛


 目を覚ました俺が最初に目にしたのは丸椅子に腰かけ、スマホで何かを話している岡田の姿だった。

 周囲の様子を探ると、屋内なのは間違いないが、天井の化粧板や壁紙がはげ落ちてボロボロになっているのが判る。

 錆びだらけの工作機械が放置されていることから、今は廃屋になっている元工場に連れ込まれたのかもしれない。

 自分の状態を確認すると、両腕に手錠をかけられた上で、キャスター付きの椅子に座らされていた。


「勤務時間とかどうでもいいから一刻も早く大主教に繋いでくれよ、誰のせいでこうなったと思ってるんだッ!」


 岡田は電話の相手に対してかなり怒っているらしく、作業台を指でトントンと叩きながら怒鳴り声をあげていた。

 数分間電話で押し問答のような会話を続けていたが、最後にはあきらめたように『大主教から連絡を待ってるから』と言って通話を終わらせた。


「おう、目が覚めたか」


 通話を終わらせた岡田は一転して落ち着いた声を出し、作業台に置いてあって紙パックのジュースにストローを刺してから差し出してくる。


「おごりだ、水分と糖分を取っとかないと持たないからな」

「えっと、毒とか入ってないですね?」


 喉がカラカラなので水をもらえるのはありがたいが、誘拐犯が俺に親切にする理由がわからない。


「この状況で毒殺なんてしないって。むしろ、お前が死ぬと俺の都合が悪いんだよ」


 わざわざ目の前でストローを刺したのは毒を入れて居ないことをアピールするためだと思ったので、ありがたくジュースはいただくことにした。


「えっと、俺、誘拐されたんですか?」

「そゆこと、俺、誘拐犯。お前は被害者」

「なんで? 俺を誘拐しても家、金持ちじゃないし身代金とか出せませんよ」

「…………。ノーコメントだ。お前がホラふいても、見抜けないからな。まっ、怪我をしたくなきゃ、大人しくそこで座っていろ」


 そう答えると、岡田は作業台に向かいカチャカチャと銃の整備を始めた。

 警官が腰に差している見慣れた拳銃ではない、鉄パイプを二つ繋ぎ合わせた形のもっと大きくてゴツイ銃、ショットガンだ。

 逃げたらショットガンで撃たれてた可能性があるのか、おお怖い怖い。

 とはいえ、抵抗しなければ殴られたりはしないと思ったので、俺は目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をして今の状況について考えることにした。


 Q 目の前の男は何者だ?

 A 岡田と名乗った30歳くらいの男性、警官を自称いたが真偽は不明。ただし、間違いなく魔法使い。


 Q 岡田はなぜ俺を誘拐した?

 A 回答しないと言っていたが『嘘をつかれた場合、俺にそれを見抜く手段が無い』とも言っていたので、俺から何らかの情報を聞き出すために誘拐した。


 Q 岡田が聞き出したい情報とはなんだ?

 A 考えるまでもない。


「岡田さん、俺が投稿した『魔法でやってみたシリーズ』のことで話が聞きたいんですよね。ぶっちゃけると、あれはCGじゃなくてマジで魔法使ってるんですよ」


 とりあえず俺は自分から情報を出して相手の反応をうかがっていくことにした。

 幸い俺にはニビルのことも含めて、知られたら困る秘密は持っていない。

 俺が話始めると岡田は作業の手を止めて、俺の顔をジッと見つめてくる。


「あれが本当の魔法なのはすぐに判った。ただ、遊び半分で魔法を見せびらかすなよ」

「へえ、魔法を見せびらかすのは悪いことなんですね」

「当たり前だろうが、お前の師匠はいったい何を教えていたんだ?」


『魔法は隠すのが当たり前』


 この男、魔法を使って生活することが当たり前のニビルの民とは全く異なる常識を持っている。

 恵子やミ・ミカとは違う、おそらく地球人の魔法使いだ。


「でも、魔法を隠したいなら、いきなり垢BANは悪手でしたね。あんなことしたら、怪しい奴がバックにいるって一発でわかりますよ」

「それなあ、俺も管理の連中から動画消しましたよって聞かされたときには、マジで無能な連中ぶっ殺してやろうかと思ったぜ。無害だから監視だけすればいいって言ったのに無視したがったからな」

「あっ、そうなんですか」


 俺は幸運が降って湧いたことに心の中でガッツポーズを作る。

 移民計画の進捗を考えた場合、岡田の提案が通っていたら、底辺〇ou〇uberから脱出するために何年も費やす羽目になっていた。


「お前、なんか嬉しそうだな?」

「えっ? そっ、そんなことないですよ」


 しまった。俺は慌てて口をすぼめて表情を引き締める。

 誘拐された人間が、加害者と話して喜ぶなんて、明らかに不自然な反応だ。


「まあいい、お前が嘘を言っている可能性もあるし、今の話は聞かなかったことにしておく」


 岡田はもう話はしないと言わんばかりにガチャガチャとショットガンの組み立てを再開する。

 魔法を秘密にしなければならない理由についても聞き出したかったところだが、この様子だともう岡田は会話に乗ってこないだろう。


『お兄さん聞こえますか?』


 不意にミ・ミカの声が聞こえてきて、俺はキョロキョロと左右にクビを振って彼女の姿を探すがどこにも見当たらない。


『いま、恵子が自分とお兄さんの聴覚を共有してわたしの声を届けています』


 マジか!? 恵子ってそんなことも出来るのかよ。

 まあ、今の俺は恵子の使い魔であいつは絶対命令権っていうのを持ってるから、聴覚の共有が出来ても不思議じゃないか。


『お兄ちゃんの目と耳にさっきまでアクセスしてから、だいたいの状況は把握してるわ。今から助けに行くから合図をしたら肉体強化を発動して、岡田から出来るだけ距離を取って欲しいの。特に魔法は絶対にお願い、お兄ちゃんの魔力反応を追って正確な位置を特定するから』


 合図? 位置の特定? いろいろと聞きたいことがあるが、俺が口を開けば恵子の作戦が岡田にバレるので口を噤むしかない。


『いまから突撃します。お兄さん、肉体強化を入れてください』


 十秒もしないうちに合図が来た。

 俺は肉体強化魔法を発動してその力で床を蹴り、椅子のキャスターを利用して岡田から距離を取った。

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