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異世界帰りの妹は世界を変革するつもりです  作者: 戒
第一章 アヌンナキがやってきた
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第18話「それでは試合開始なのだ!」

 ――ミ・ミカ


「それでは試合開始なのだ!」


 ムツキの開始宣言と同時に私は飛行魔法で身体を浮かべ、ほぼ同時に右足で空を蹴り溜め込んだ魔力を後方に叩きつけた。

 魔力の爆発によって生まれた莫大な推力が私の身体を前へ前へと押し出していく。

 突撃のスピードは時速三〇〇キロ超。

 当たり前だが、肉体強化の魔法を使い身体に火はいれてある。

 というか、肉体強化無しで高速飛行をすれば身体は一瞬で潰れてしまう。

 私の狙いは最短距離で一〇メートルの距離をつぶして、先に剣を当ててしまうこと。


拡散指向性光線(スプリットレーザー)ッ!』


 恵子は開始の合図と同時に空を蹴り、三〇〇キロ超のスピードで後方に飛びのいて距離を稼ぎつつ数十本のレーザーを面状に放って私を迎撃してくる。

 光と回復魔法を得意とする恵子は、魔法戦では主にレーザーを使って攻撃してくる。

 光を束ねて高エネルギーを作り出すレーザーの攻撃は強力だ。なにしろ攻撃速度が光速なので基本的にかわす方法が無い。

 レーザーの面制圧攻撃をかわし切れず、何本もの光に私は被弾してしまう。

 審判によってはここで試合を止められてしまうところだが――。


「ダメダメ。焦点温度が五〇〇度以下のレーザーなんて、ミ・ミカはおろか私にも効かないのだ。よって無効」

「っち!」


 恵子が露骨な舌打ちを鳴らす。

 レーザー攻撃は回避が難しい強力な攻撃だが、私の硬化は威力の落ちる拡散レーザーなら完璧に防ぎきる。

 面制圧の効果が無いことをわかっていながら判定勝ちを狙ってくる辺り、実に恵子らしい戦術だ。


「小賢しいことを考えたこと、後悔させます」


 飛行速度が上がってきたので私は肉体強化のギアを一段階上げる。

 今日お兄さんには一番基礎的な筋力の強化方法を教えたが、魔法戦でもっとも重視されるのは、脳の情報処理速度の強化と、神経の情報伝達速度の強化だ。

 高位の魔法使い同士の戦いは飛行魔法を使った空中戦が主戦になる。

 立ち上がりの速度は数百キロ、十分な距離があれば音速を突破する戦闘で、脳の情報処理速度が普通のままでは敵を知覚することが出来ないのだ。

 肉体強化の魔法は、身体のあらゆる機能を強化する。

 脳の情報処理速度を倍にすれば周囲のスピードは半分に、10倍にすれば人の動き、飛んでくる矢、自分の狙う刃のスピードが十分の一の速さで知覚することが出来る。

 しかし、ただ知覚出来るだけでは意味が無い。

 だから神経に魔力を流し、全身への情報伝達速度も強化する。

 肉体なんて所詮は、脳の作った電気信号を、神経をという電線に流して動かす繰り人形に過ぎない。

 私達の精神は神聖なものではなく、私達の肉体は特別なものではない。

 そのことを、私達ニビルの民は知っている。


 私はもう一度魔力の後方噴射を行って加速し一気に恵子に肉薄する。

 恵子と私の飛行速度はほぼ互角なのだが、拡散レーザーの発射に魔力を消費した彼女の後退加速は明らかに普段より鈍かった。


「もらった!」


 恵子に向けて二本の剣を交互に振るう。


「甘い」


 恵子は最初の薙ぎ払いを弓で受け止めると、続いて私が右手の剣を振り下ろすのに合わせて回し蹴りを放った。

 恵子の蹴りに私の硬化を抜く威力はない、しかし蹴りの反動で彼女の身体は後方に飛び、振り下ろした私の剣は空を切った。


「距離を詰めれば勝ち確とか思ってたでしょ」

「格闘戦まで強いのはズルいですよ」


 恵子が指先をこちらに向けるのを見て、私はスピードを稼ぐために下降する。

 私が飛び去った直後、背後を恵子の放った収束レーザーが通り過ぎた。

 恵子が運動神経抜群なのは知っているが、斬撃を蹴りでさばくほどの格闘センスがあるのは想定外だ。

 なにより恐ろしいのは、最初の斬撃を神器で受けたあと、蹴りに移行するために邪魔な神器を迷わず捨てるクソ度胸だ。


「くそお……」


 今度は私が舌打ちする番だ。

 高所を取られてしまった。

 空中戦のメカニズム的に、上から下に撃ち下ろす方が圧倒的に有利だ。

 恵子は下を飛ぶ私を上から撃ちまくればいつかは当たるが、私は恵子に近づくために上昇したらスピードが落ちて狙い撃ちにされてしまう。

 右側面を高出力の収束レーザーが通り過ぎていく。

 狙い撃ちにされないように右左に小刻みに旋回しながら飛び回っているが、恵子はピッタリと背後に張り付いてくる。


「落ちろ、かとんぼ!」

「落とされるもんか」


 逃げ回る私の視界に背の高い木の生えた森が見える。

 こうなったらイチかバチか……。

 私はさらに高度を下げて森の中に飛び込んだ。

 さすがの恵子も、見えない敵は撃てない。


「森に入ったか、でもそれは悪手よ、森から出た瞬間確実に狙い撃てるわ」


 恵子は多分、森の上空で足を止めて狙いを定めている。

 今までは互いに飛び回っていたので命中する確率はほとんどなかったが、静止射撃ならレーザーはほぼ必中。

 飛び道具を持たない私はまさに袋のネズミ……だと、思っているはずだ。


「恵子、勝負だッ!」


 私は手近にあった大ぶりの枝を切り落とし、それを抱えて恵子に突撃する。


「そんな枝が盾になるか!」


 待ち受けていた恵子が収束レーザーを放つ。

 彼女の言う通りただの木の枝で収束レーザーを防ぎ切ることは出来ない。

 しかし、硬化魔法を付与した木の枝は燃え落ちるまでの数秒間、私の身体を守り切った。


「てえええい!」

「こなくそ!」


 両手で枝を抱えていたので剣は握っていない。

 私は距離を詰めたら即恵子に殴りかかるが、彼女は回し受けを駆使して私のパンチをキレイに受け流す。

 カウンターで恵子が手刀を放つ。

 先ほどと同じでダメージは期待せず打撃の反動で距離を離すつもりだ。

 私はあえて首の根本を手刀に叩きつけた。


「しま……」


 私は首を傾けて頭と肩で恵子の右手をロックする。

 外すことは簡単だが、一瞬恵子のわき腹ががら空きになる。


「えーい!」

「有効! この試合、ミ・ミカの勝ちなのだ」


 私の中段突きが恵子のわき腹に炸裂したところでムツキが判定を下した。

今後まず書くことのない対戦カードなのであえて対戦させてみました。

戦闘シーンのイメージはアーマードコア4のネクストACのイメージで書いています。

恵子がレーザー引き撃ちアセン、ミ・ミカはブレオンアセンでイメージすると判りやすいと思います。

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