プロローグその1
鬱で障害認定を受けてしまったのでリハビリがてら小説を書くことにしました。
好きなように書いているので流行りとかテンプレとかはあまり意識していません。
ただ、ジャンプ漫画が大好きなので影響はあると思います。
――天原恵子
目の間を覆う黒い闇の中から、強烈なカビの匂いと木の匂い、そこに薄っすらと混ざる硫黄の匂いが漂ってくる。
コン…コンコン……。
「高さ一.六、幅二.〇くらいかな? 狭いから頭打たないように注意してください」
私の前に立つ小柄な少女は、背負った剣を暗闇の中にエイヤッ!と差し込んで中の様子を探っている。
戦士の魂である剣をそんな雑に扱っていいのか心配になるが、彼女的にはダンジョン探索に行くわけでもないのに一〇フィート棒なんてかさばるものを持ち歩く方が嫌らしい。
身長は私より少し低い小柄な少女で、額を覆うように大き目のベレー帽をすっぽりと被り、腰まで伸びた赤い髪を三つ編みにして一本にまとめている。白いブラウスと格子模様のジャンパースカートの組み合わせだけ見ると女学生風の装いだが、髪と同じ色の赤い色のコートを羽織っているおかげ精悍な印象を受ける。
一見すると少し派手な格好をした女の子にしか見えないが、背中に背負った二本の剣が何者であるかを雄弁に語っている。
彼女の名は、ミ・ミカ。
頼もしい私のボディガードだ。
「気を付けてください、変な匂いがするし先がどうなってるか……」
「いや、自激臭もないし大丈夫でしょ」
「恵子ッ!?」
私は暗闇の中に迷いなく身を沈める。
足に引っかかるような感触がある、どうやら空間の接続が甘くて足元に段差があるようだ。
「段差があるから転ばないように気を付けて」
もう一歩踏み出すと格子戸の隙間から差し込むオレンジ色の光が見えた。
天井は木製、古くてカビだらけ、足元も古くてカビだらけ。
間違いない、ここは日本、おそらくあまり人の来ない神社のお堂の中だ。
私は格子戸を開け、賽銭箱を蹴倒さないように気を付けながら外にでる。
「ふぁあああッ!!」
外に出た私を待っていたのは懐かしい生まれ故郷の景色。
ここは町はずれにある岩山の上に建てられた神社。
境内から街並みを見下ろすことが出来る隠れた絶景スポットで、子供のころよくお兄ちゃんと二人で遊びに来た思い出の場所だ。
「やった、やった!! 帰ってきた! わたし帰ってきたよ」
思わず両手をあげてガッツポーズを取る。
ここまで気分が昂揚するなんて思ってもみなかった。
故郷を離れ、お兄ちゃんと離れて――五年。
短いようでとても長い時間だった。
パチ、パチと拍手する音が聞こえてきて、振り返るとミ・ミカがとても優しい笑顔で私を見ていた。
「恵子、おめでとうございます。よかったですね、帰って来られて」
「サンキュ! ここまでくれば私の目的はほぼ果たしたようなものね」
極論すると私は五年間、故郷に帰りお兄ちゃんに再会するためにずっと頑張ってたきた。
「恵子、全部投げ出してしまってもいいんですよ、少なくとも私は」
「その話は前にしたでしょ、全部投げ出して逃げるなんて“面白くない”じゃない」
誘拐された女の子ほど不幸な存在は他に無いと思う。
変態のオモチャにされて死ぬまで犯されたり、クビを絞めて殺されたり、ナイフで刺されたり……。
運が悪いといえばそれまでだが、彼女達はきっとこの世に存在する中で最大級の苦痛を味あわされて死ぬ。
私もきっとそんな彼女達より少しマシ程度には不幸なんだと思う。
わずか一〇歳で最愛の家族と引き離され、
見たことも聞いたこともない国に連れていかれ。
そして……常人なら気が狂うような使命を負わされた。
告白します。
私の名は、天原恵子。
誰も信じないと思うけど、私は五年前神様に誘拐されました。




