無料十連を無駄にしていくスタイル
異世界転生してる主人公はだいたい強いしかっこいいので、弱くてかっこわるい異世界転生が読みたくて書き始めました。よかったら読んでってください。
起きなさいーー
「ん……」
起きなさいーー
遠くから、もしくは耳元なのかもしれないが、何やら声が聴こえる。その声色は優しく、慈愛に満ちたような綺麗な声だ。
僕の意識が覚醒しそうになっているのだろう、段々とその声は鮮明さが強くなっていく。
あまりにも心地のいい声に、もう一度意識を手放したくなったが、流石に放ったらかしにするのは不憫に感じ、ゆっくり、ゆっくりと瞼に力を込める。
そして更にゆっくりと目を開いた。
「やっと起きましたか、ねぼすけさん」
僕が目を開けた、そこには女神が立っていた。これは比喩表現などではなく、確かに女神が立っているのだ。今時の漫画やゲームに出てくるような、テンプレートな女神。女神オブザ女神。
女神と検索したら、トップに画像が出てきそうな、ありきた
「何やら失礼な事を考えていますねぇ」
目の前の女神はこの世のものとは思えないほどの、端麗な笑みを浮かべながら、僕の頬を抓ってきた。驚いた、結構痛い。爪が長いのか、ちょっと頬に突き刺さってる。というか軽くナイフ的な物で刺されたくらいの痛みなんですが。
「いだだだだ、ちょ、は、はなせ……離してください!」
意識を戻してから初めての発生が、なんとも情けない悲鳴になるとは思わなかった。そんな涙目な僕を一瞥し、女神はようやく僕の頬を解放した。
やや(かなり)赤くなった頬を擦りながら、一度、状況を整理することにした。
僕の名前は……何だっけ?
「山本嘉一、年齢十七歳、東京都内在住、親は大富豪、友人にも恵まれ、幸せな人生を歩むも、先だって……学園からの下校中、
轢死」
「!」
まるで僕の心をすべて読んだかの如く、女神がその優しい声色で淡々と語るそれは、僕のプロフィールと言ったところだった。そんなことよりも僕の胸を抉った、最後の一言。
轢死。
そうか、そうだった。思い出した。
僕は、人を助けて死んだんだ。
ーーーーーー
「いいえ? 嘉一君、貴方は誰も助けてなんていませんよ?」
今まさに、回想シーンに移ろうかとする僕の意識を強引に引っ張り上げる、女神の声。
その言葉にはてなを浮かべる。え?
「いやいやいや、女神様? 女神様で合ってますよね?」
「はい、けっこうですよ」
「僕……たしかにトラックに轢かれそうな子供を助けようとして、それで代わりに轢かれた記憶があるのですが?」
そうだ、だからこそ僕は死んだのだから。
「あ、なるほど……そういう記憶に改ざんされてしまっているのですね、実際はですねぇ」
女神が少し困ったような笑みを浮かべながら、指を小気味良く鳴らせば、ホログラムのようなモノが浮かび上がり、そこには、まさに僕が子供を助けようと走り出す場面が映し出されていた。
「ほら! やっぱり僕はこの子を庇って……あれ?」
そのホログラムがまるで映画のように再生され、映像内の僕が動き出す。
そこに映っていたのは、見ず知らずの子供を勇敢に庇い、そのまま息を引き取った勇者などではなく、子供に辿り着く前に、なぜ、なぜそんな所に落ちていたのか不明であり、謎であるが、
バナナの皮に足を取られ、転けた拍子にそのままトラックにはねられる僕であった。
「ちなみにこの子供はトラックにカスリもしていませんでしたよ」
よかったですね、と慰めるように声を掛けてくる女神。
あ、
なんだ。
「すごい無駄死に感」
誤字脱字あったらすみません。




