1/49
1
冬の日、私は産まれた。
お母さんは涙を流して「ありがとう」と喜んだ。
お父さんもちょっと泣いていた。
おじいちゃんとおばあちゃんもすぐに駆けつけて、鼻を赤くして微笑んでいた。
そんなこと産まれたばかりの私は知らないけれど、あとからその話を聞いた時、愛されていたんだなぁって嬉しくなった。
"未千"(みち)
まだ知らない世界を、千の数ほど豊かで実りの多い人生を歩んでいってほしいと願いが込められた名前。
その名前のようにかは分からないけれど、いや、多分きっと両親の思いとは違うと思うけれど、
私はしたいことを沢山経験させてもらった。
そして私は、夢を見失い、自分が何をしたいのかどう生きたいのか分からなくなった。