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百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
92/300

92「畳」【挿絵あり】


学生時代からの友人で、今は自衛隊にいる知人から

聞いた話。


今は潜水艦乗りらしいが、新人の頃は一通り訓練され、

もちろん地上での訓練も受けたという。




「林の中とか山の中とか、夜戦もしたよ。

 戦争になれば昼も夜もないからな」




関東のとある基地に勤務していた頃、地上戦の訓練が

あった。

朝から3昼夜通しての、ハードなものだったという。




「最後の夜かな。

 もう少しで終わりだって時に、妙な体験をしたよ」




その時は、山のふもとで斜面の木々の間を他の仲間と

歩いていた。

枯葉を踏む音と、時折入る無線の音だけが闇の中に響く。


と、いきなり先頭で歩いていた仲間が声を上げた。

同時に体勢を崩して転ぶのが目に入った。

何やってるんだ、そう思った時―――




「いきなり地面が揺れたんだ。

 で、ドミノ倒しみたいにパタパタと、

 自分も含めてみんな倒れてしまった」




地震かと思ったが、感覚がおかしかった。

全体が揺れるのではなく、足の下だけが動いたような

感じだったという。

やがて木々のざわめきの他に、何か引きずるような音が

聞こえた。

暗闇なのでよく見えなかったが、平らな黒い何かが、

斜面を上っていくのが見えた。




「何ていうか、縦に5、6畳ほど敷いた畳が

 動いているような感じだったよ」




倒れた原因は、どうやら仲間がその上を知らずに

歩いて、それが動いた事によるものだったらしい。

訓練が終わり、報告の中にその事も入れて教官に

提出したのだが、




「それはよくある事だから

 いちいち書くな、だってさ」




ウンザリした表情の教官に、アレは何かと聞いたが、


“気にしても仕方がないものを気にするな”


としか答えてもらえなかったという。





挿絵(By みてみん)

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