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百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
79/300

79「石段」【挿絵あり】


30代後半のグラフィッカーの男性から聞いた話。


彼は高校時代、眼鏡店でアルバイトをしていたそうだ。

シフトの日が土日に重なった時は、そのお昼に母親が

用意してくれたそのお弁当を、近くの神社の境内で

食べるのが楽しみだったという。


その神社は都内とはいえ、周囲がかなり自然豊かで、

境内に行くまでの石段から神社の社殿に至るまで、

夏の日中でも木陰で薄暗いほどに―――


彼がいつものように、境内でお弁当を食べようと石段を

上っていた時の事。

ふと、何気なく空に目をやると、木々の葉の隙間から、

白いものが見えた。




「……旗?」




それは、無地の長い布のように見えた。

その日は風が強く、横なぐりの強風が吹き荒れていて、

どこかの洗濯物がそれで飛ばされたのかな、

くらいにしか思わなかった。


足元を見ながら、一段一段上っていくと、ちょうど

最上段の入り口のところに、白い布が落ちていた。

見たところ、幅50cm、長さは5メートルほど。




「あの布が落ちてきたのかな、

 と思ったんですけど」




彼の足が階段を上るを止めた。

これだけ強風が吹き荒れている中を、多くの木々に

囲まれたこの場所に―――

どの木にも引っかからずに落ちてくる事など、

有り得るのだろうか?


可能性としてはゼロではないが……

疑問と同時に背筋に冷たいものを感じた彼は、

くるりと背を境内に向けた。


後ろへ向きを変える時、視界の片隅でその布が、

糸で吊るされたように浮き上がった気がした。

恐怖と混乱で、彼は一気に下まで駆け下りた。


下まで来ると、おそるおそる境内を見上げた。

そこには、いつもの石段が木漏れ日に照らされて

いるだけだったという。





挿絵(By みてみん)

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