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66「モーモ」【挿絵あり】
品川区に住んでいる主婦の方から聞いた話。
彼女は生まれも育ちも品川で、一時東京から
離れていたが、結婚を機に実家の近くまで
戻ってきていた。
子供も生まれ、その子が幼稚園くらいの頃に、
こんな出来事があったという。
「近くに小さな公園があったんですけど、
そこから帰ってきた子供が変な事を
言い出したんです」
聞くと、“モーモがいる”という。
“モーモ”とは牛の事だと思ったそうだが、
公園に牛がいるなんて普通は思わない。
確認のために外に出ると、子供は道案内をするように
駆け出した。
「そのまま公園のトイレに向かったので、
中をのぞいてみたんですが」
そこには、狭そうに巨体を入れている牛がいた。
動物園でかぐような匂いも確かにあった。
びっくりして子供を抱き上げると、そのまま家に
戻って夫にそれを告げた。
「でも、夫と一緒に行った時には
もう牛の姿はどこにも無くて」
今年中学生になる息子さんもその事は覚えていて、
今でも時々話題にするという。
ホルスタインのような白地に黒模様の牛ではなく、
全体的に茶色がかっていたそうだ。