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56「指導」【挿絵あり】
役所に勤める知人から聞いた話。
以前林野庁絡みの仕事をした時に、そこの人から
面白い話を聞いたという。
仕事柄、彼らもやはり現場で不思議な体験を
する事があるらしいが、そういった場合に
対処はどうしているのか、興味本位で
聞いたそうだ。
「業務に関係無ければ、
基本的に無かった、
もしくは見なかった事になる」
少し前、と言っても戦後しばらくまでの頃だが、
その頃はきちんと記録も取っていたようだ。
北海道あたりはその手の書類だけで、何冊か本が
出来るほど、不可思議な記録が残っていると、
その人はそう言っていた。
「記録に残さなくなったのは、指導か何かで?」
それも聞いたが、単に全国規模で珍しい話ではなく、
いちいち構っていられないというのが真相だろう、
との事。
「まぁ何か話があったら
聞いてきてやるけど……」
困ったような顔になる知人に、何があるのか聞くと、
「何ていうか、もう不思議な事とは思ってなくて、
返って話を聞こうにも何にも無いって向こうに
言われるだけとか……」
教訓:本当に怖いのは人の慣れ。