47/300
47「後ろ髪」【挿絵あり】
ある大手に勤めているSEの話。
彼の仕事はいわゆる物流サーバーの管理で、
都内の勤め先へは秋葉原を経由していた。
ある時、彼はいつものように秋葉原駅を降りると、
妙なものを目にした。
「髪を後ろに縛っていた男性を見まして。
今は珍しくないんでしょうけど」
しかし、妙だったのはその髪の色だった。
後ろに縛った髪だけが茶色に染められていたのだ。
「他は普通に黒だったんですけどね……
まあこういうのもあるのかな?
と思って見ていたら」
その後ろ髪がふわっと浮き上がった。
え? と思って見続けていると、
肩に何かが乗っていた。
「小さな狐が乗っていました」
後ろ髪だと思っていたのは、その狐のしっぽだった
らしい。そしてその狐と目が合った。
狐は一回あくびすると、目を閉じて眠ったように
見えたという。
そして男性は狐を乗せたまま、雑踏の中へ消えていった。
「何だったんでしょうね、アレは」
答えようが無いものである。