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百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
46/300

46「お守り」【挿絵あり】



知り合いのお寺の、その同僚の方から聞いた話。


私より4、5才ほど年下の彼は、毎年夏になると

父方の実家へ里帰りしていたという。


大自然の中、近くの川へ釣りへ行ったり、

山に入って虫を捕ったりと、子供心にもそれは

待ち遠しい季節だった。




「でも、楽しみはそれだけじゃなかったんですよ」




田舎に帰るもう一つの楽しみ―――

それは、女の子に会う事だった。

親戚の? と聞くと彼は首を横に振り、




「最初は僕もそう思っていたんですけど、

 どうも違っていたらしくて」




彼女と初めて会ったのは、もう使われていない、

木材の集積小屋みたいなところだったという。

結構大きく、ハシゴで1階と2階を行き来するような

建物だった。




「必ず会える、というわけではなかったんですが」




それでも小屋に行くと、2、3回に1回はそこにいて、

よく遊んだという。

遊ぶのはいつも二人きりで、なぜかそれを話しては

いけない気がして、親にも黙っていた。




「今考えてみれば、怪し過ぎますけどね。

 でも何ていうか、女の子と遊んでいる自分が

 あの年代では特別な存在のように思えて」




それは中学に上がる頃まで続いたらしい。

しかし、彼が中学に入って1年目の夏、

突然彼女からお別れを言われた。




「もうあなたには私は見えなくなるから、

 いきなりそんな事を言われて」




中学2年の夏、もうその小屋に行っても

彼女はいなかった。




「大人になったって事なんですかねえ」




不思議な事に、その彼女の顔や着ていた服など、

全く思い出せなかったらしい。


ただ、どこから紛れ込んだのか、小さな小枝が

小屋の中に落ちていて、彼はそれを何かの

お守りのように、大事に持つようになった。

そのおかげかどうかはわからないが、大過なく

これまで暮らせてきたという。


ある時、親戚の集まりでその小枝をうっかり

落としたところ、遠縁の年配の女性から

『家屋敷、全財産とそれを取り換えてくれ』

と言われ、困惑した事もあったらしい。


今でも彼は田舎に帰った時は、その小屋に

毎日顔を出しているそうである。






挿絵(By みてみん)

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