45「接待」【挿絵あり】
猫飼いの知り合いの人から聞いた話。
その人の知り合いが仕事の都合で上京し、
都内に移り住む事になった。
その時、引越しの手続きが済むまでの間、
家にその家族を泊める事にしたという。
その家族が初めて泊まりに来た日。
仕事で深夜に帰宅した彼は、その家族がすでに
寝ているだろう部屋を静かに通り過ぎ、自室へと
向かった。
その途中、何やらにぎやかな音がする。
それはどうも、子供の部屋から聞こえてくる
ようだった。
「その時は子供はみんな独立していたし。
何だろう、と思ってのぞいたんだ」
すると、TVゲームで遊んでいる人影が目に入った。
2人いて、1人は髪の長い20才そこそこの女性、
もう一人は12、3才くらいの女の子に見えたという。
「知り合いの子かな」
まあ好きにさせてやろうと、彼はそのまま
自室に戻り眠った。
朝起きて知り合いと一緒に朝食を食べている時に、
彼は気付いた。
「知り合いの子に、
女の子はいなかったんだよね……
そもそも、男の子の兄弟で、
2人ともまだ小学生だったし」
彼は家族にはその事を話さないで、密かに子供部屋へ
向かった。
見ると、昨夜見たTVゲームは残されており、
そのそばで猫が2匹、寄り添って眠っている。
1匹はメスで、今年3才になる自分の家の飼い猫である。
しかし、もう1匹の、一回り小さな黒猫に心当たりはない。
すると、知り合いの奥さんが入ってきて言った。
「あ、コタローちゃん、
ここにいたの」
聞くと、すでに去勢してあるので、
オスだけどメスと一緒にいても問題は無いと
説明された。
まだ1才にも満たないらしい。
「室内飼いだったし。
自分より小さい子が来たので、接待でも
していたのかねえ」
ちなみに、その時に遊んでいたのは、
某格闘ゲームだったそうだ。