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百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
44/300

44「お面」【挿絵あり】


知人の話。

都内のある印刷所で働いている彼は、

生まれも育ちも東京の下町で、子供の頃は

よく地元のお祭りに参加していた。




「10才くらいの頃だったから、今から20年くらい

 前ですかね」




近くの神社の境内は今でも緑を多く残していて、

少し茂みに入ると、子供なら完全に隠れるくらい

だという。


ある夏祭りの夜、両親に連れられて屋台を冷やかして

歩いていると、ふと茂みの奥に光を見つけた。

目をこらして見ると、複数の大人が何やら話している

みたいだった。




「好奇心もあったと思いますけど、その時は

 何でもいいから背伸びして、大人の仲間入りを

 したがっていたんだと思います」




近付くと、案の定何かの儀式に備えたような

見た事もない格好をした大人が複数いた。




「今考えると、山伏のような格好をしていたんじゃ

 ないかと」




彼はその大人たちに遠慮無く、

“僕もそれ着たい!”

“僕もそれやりたい!”

と要求した。


大人たちは互いに顔を見合わせていた。

よく見ると、皆お祭りでよく見る鼻の高い

お面をしていた。

動作はどこか重く、ビデオのスロー画面を

見せられているようだったという。




“これは……したが……”

“……祭り……ダメだ……”

“……帰そう……”




何を言っているのかよく聞こえなかったが、

どうやら拒否された事だけはわかった。

ふっ、と突然体が宙に浮いたかと思うと




「えっ?」




気がつくと、彼は社殿の屋根の上にいた。

その高さと突然の事態に怖くなると、大声で泣き出した。

下は大騒ぎになったという。


結局、はしごを使って彼は救出された。

怒られるより、どうやって屋根に上ったのか

呆れられたという。

わけを話そうとしたが、なぜかその時は声が

どうやっても出ず、仕方なく諦めた。




「次の日は普通に話せたんですけど、

 “もっとマシな言い訳を考えろ”

 って親父に怒られて」




それでも彼は、今でもそのお祭りを毎年楽しみに

していると語った。





挿絵(By みてみん)

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