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43「豪雨」【挿絵あり】
東北の遠縁の方から聞いた話。
子供の頃、母と一緒に里帰りしていた彼は、
実家の人と山菜採りに行く事になった。
しばらく山を登っていくと、急に雲行きが
怪しくなり、雨が降ってきたかと思うとたちまち
豪雨になってしまった。
季節は晩夏で、夏でも1日雨が降れば
急激に冷えるので、ストーブがすでに
出されているほどだった。
山菜採り一行の中で一番若かった彼は、
一足先に家に戻り、ストーブに火を
入れておくように言われた。
びしょ濡れになりながらも実家へと走り、
玄関を開けたところ、彼の母親がいた。
「どうしたの?」
聞くと、家の誰も山菜採りに行ってないし、
彼を誘ってもいないという。
玄関を振り返った彼の目に、都会のような
強烈な陽差しが飛び込んできた。





