40「タブー」【挿絵あり】
念願の一戸建てをローンを組んで購入した、
そこの主婦の話。
家を建ててまず真っ先にした事は、ペットを
飼う事だった。
子供の頃から実家が猫を飼っていた彼女は、
さっそく以前から話しを通していた友人より
二匹の子猫を譲り受けた。
その友人の家で飼っていた猫が産んだ子供で、
両方ともメス。
家に来た姉妹猫は家族からとても可愛がられた。
3年もすると、二匹とも立派に成長し、一匹は
豊満というか全体的にバランス良く成長したが、
もう一匹はお腹に肉が集中し、「太ましい」「タヌ子」
と呼ばれるようになった。
ある時、その姉妹猫が食後の毛づくろいをしているのを
何気なく見ていたが、ふと横になっていた「タヌ子」の
お腹を、何を思ったのか、もう一匹が片方の前足で
「ぶに」と押した。
「何するのよっ!!!」
大声と共に「タヌ子」は、前足で引っぱたくように
思い切り猫パンチをその姉妹猫に食らわせた。
聞こえた声は若い女性のそれで、部屋には人間の女性は
彼女しかいなかったのだが、はっきりと自分以外のその声を
聞いたという。
「まぁ、それは怒るでしょ、と思ったけど……
あんな声まで出して、相当気にしていたのね」
声を聞いたのはその一度きりだったというが、
未だにその二匹は健在だそうだ。