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百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
35/300

35「巻きつく」【挿絵あり】



50代半ばの男性から聞いた話。

彼はトラックの運転などの仕事を転々としてきた、

いわゆる肉体労働者である。




彼には息子が一人いたが、子供が生まれてから

すぐに奥さんに先立たれてしまい、男手一つで

息子を育ててきた。

今では息子も大学生にまでなり、ようやく

一息つけるようになったという。




「しかしなぁ、子供ってホント、

 生まれた頃から記憶を持っているんじゃないかな」




彼の話によると、最近息子からこんな事を

言われたらしい。




「なぁ親父、家には昔、

 蛇がいたよな? って」




借家ではあったが、仮にも都会の一戸建てである。

しかし、彼には心当たりがあった。


赤ん坊の頃の息子は不思議と手がかからなかった。

泣き叫んだり、ぐずったりするという事がなかった

という。


ある時、オシメを換えようとベビーベッドに近付くと、

ロープのような物が赤ん坊に巻きついている。

驚いて近付くと、はっきりとそれを確認した彼は

声を上げた。




「白い蛇がよう、こう、全身に巻きついていたんだ」




慌てて取り払おうと手を伸ばすと白蛇はスルスルと

外へ出て行ってしまった。

後には、スヤスヤと眠っている赤ん坊がベッドに

残された。


それから、息子の寝床に蛇の物と思われるウロコが

落ちている事が何度もあった。

それは息子が3才くらいになるまで続いていたが―――




「ある日、息子が“白い蛇を見たよ”って

 言ってきたんだ」




それまでは、余計な心配をかけまいと、息子にも

蛇の事は言ってなかった。

とうとう気付かれたか、とも思ったが……




「その時あたりからかな。

 パッタリと止んだんだ。

 ウロコも姿も見せなくなった」




知り合いの住職にその話をして、それは母親でしょうか?

と聞いてみたが、




「ま、向こうに行けばわかるこった」




そう言って取り合わなかった。





挿絵(By みてみん)

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