100「見えざる者」
・『人外』の証について
お寺で修行している知り合いの話。
「妖怪や人外との悲恋話とか、アニメや漫画でも
一緒に暮らしたり戦ったりする話があります
けど―――」
彼がそう言うと、同僚たちも話に加わり……
例えばアメリカだと、ヴァンパイアや人狼などは
定番であり、
欧州でもイギリスは妖精話が盛んで、
フランスだとジェヴォーダンの獣など、
それぞれ特色のある人外の物語が出て来る。
しかし当然ながら、実在、もしくはその存在を
感じられるケースは稀で―――
「普通の人とかでも、そういう存在を感じ取れる
状況や条件って無いんでしょうかね」
という話になった時、彼らの師匠が部屋に
入って来た。
そしてそれまでの話の経緯や、先ほどの疑問を
ぶつけてみると、
「あるっちゃあ、あるんじゃねえか」
師匠曰く、例えばヴァンパイアが鏡に写らない、
というのは有名だし、
影が無い、もしくは薄い……
または煙草の煙など嫌がるもの、眉唾というのも
もとは妖怪に化かされないように、という
まじないの方法だという。
「変わったところだと、貸しボート屋の話も
あったが」
「それは?」
彼が聞き返すと、聞いた話だが、と師は
前置きし、
「ボートっていうのは水に浮かぶものだ。
慣れない人間だと、乗り込む事すら難しい。
で、そこで働いていたヤツの話だが―――」
何でもある時、違和感を覚える客がいたらしい。
その男性客は一人でボートに乗り込み、
湖へ漕ぎだした。
「どのへんに違和感を覚えたかって言うと、
普通、1人でボートに乗ったのなら中央近くに
座るよな?
だけどそいつは、端に座ったそうだ」
そうなるとボートは当然、客が乗っている方が
若干沈むはずだが……
バランスが取れていたという。
「何でも、もう一方の端に誰かが乗っている
ように安定していてな。
その客は戻って来た時も、ほとんど
しゃべらないでいてさ。
まあ、それだけだったらしいが」
ただボートが安定していたという事は―――
重さのある『何か』がもう一方の端に乗っていた
という事であり、
「まあそれが実在の証明になるかどうか、
わからんけどな」
師匠はそう言って話を締めくくった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は今回で一応完結します。
百物語を3回出来るくらいに溜まりましたが、
これを機にいったん終える事にしました。
機会があれば番外編として追加も考えて
おりますので、いずれまた……
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【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
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