98「効能」
・使いようによって効果が変わるものについて
お寺で修行している知り合いの話。
妖、妖怪の類の話で、『苦笑』というものが
いる。
人とも動物ともつかない外見であり、人語を
話すが語る言葉は全て人を不快にさせる。
憎まれ口、冗談、その全てが人を侮ったり
苛立たせたりするものであり―――
「ただ面白いのは、そいつの爪の効能について
記述があるんです」
それには大変な毒があるとされ、毒を持つ
蛇などもそれに触れただけで動けなくなって
しまう。
味はとても苦く、それで触れた料理は食べられ
ないほどまずくなってしまうとの事。
反面、腹痛などで苦しんでいる人のお腹を
撫でると、それで苦痛は無くなるのだという。
知人が持ち込んだその話で、同僚たちが
『効果が裏返る?』『元から悪いものには悪い
効果が出ないのでは』と意見を交わしていると、
「生薬、って考えに似ているなあ」
そう言いながら師が部屋に入って来た。
それはどういうものですか? と知人が
聞き返すと、
「薬の考え方、使い方だな。
生薬ってのは毒なんだが、量や使い方次第で
薬としての効果を発揮する。
毒にも薬にもなる……というヤツだ」
そこで師匠はいったん間を置いて、
「反面教師みたいな特性を持つ妖怪って
事なんじゃねえかなあ、そいつは。
自分の欠点や短所は言われたら耳が痛いし、
例え冗談であっても聞き逃せない事や、
言っていい事と悪い事もある。
それらに気をつけろ、という自戒を込めた
妖怪なのかもしれん」
弟子たちがなるほど、とうなずいていると、
「そもそも仏教の修行僧が―――
妖怪話で議論しているのってどうなんだ」
師の指摘に、みんなが肩をすくめた。
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