93「びっくり」
・現代怪談話・伝聞
とある中小企業に勤める男性社員の話。
「不思議な話ですか……」
可もなく不可もなしという生活をしてきた彼は、
あまりそういう経験は無いと言いながら、
「まあ一度だけ、『あれっ?』と思う事は
ありました」
二十代の頃まで一人暮らしをしていた彼は、
五階建てのマンションに住んでいたという。
「もちろん賃貸ですけど、都内にしては
結構交通の便も良く―――
それなりに安かったんで」
ある夜、彼はすでに布団に入って寝る寸前の
状態になっていたそうなのだが、
「ベッドの先がベランダに通じる掃き出し窓
だったんですけど、何かふと気になって
そちらを見たんです」
寝ている側から見ると足側にその窓はあり―――
カーテンの隙間、外側から人影のようなものが
見えた。
「ただ僕はすごい近眼で、裸眼視力0.01
くらいだったんで……
それにもう照明も消していて、豆電球の
明かりしか無かったので全然状況が
わからなかったんです」
人影というのも『何となくそう見えた』だけで、
半分眠っていた彼は、何を考えたのか、
いったん起こした上半身を、何事も無かったかの
ようにまた布団にもぐらせて、
「1分くらい後かなあ。
そこでガバッと起きて一気に窓際まで
近寄ったんです」
すると窓の外で『ふひっ!?』という男とも
女とも、大人とも子供とも取れない叫び声が
したかと思うと、
鉄製のベランダの欄干が響く音が
聞こえた。
「そこ五階でしたし、『落ちた!?』とか一瞬
思ったんですけど―――
何かこう、半分寝ぼけているような状態
でしたので、そのまま寝入っちゃったんです」
朝起きて、昨夜の事を思い出し……
ベランダに出てみると何事もなく、また
下をのぞいても特に異常は見られなかったので、
そのまま日常に戻った。
「まあ今では夢だったと思っています。
掃き出し窓は完全に閉じていましたから、
外からの声がそうそう聞こえる事も無いし」
ただ、夜は絶対に掃き出し窓にカギをかける
習慣が、しばらく残ったという。
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