91「性別」
・現代怪談話・伝聞
とある救急隊員の話。
「確かに、人が死ぬ時や直前に出会う職業だとは
思いますけど」
今年で四十才になる彼は、様々な現場を経験
してきたという。
「実際、僕たちがやるのは延命であって
治療じゃない。
生かしている間に、どの病院、どの施設に
運び込むか―――
その選定と時間との勝負です」
だから、まだ余裕があった患者の搬送先が
見つからずに手遅れになったり……
またその逆にもう助からないと思っていた
患者が、運良く近場に専門の施設があって
救命出来たりする事もあるらしい。
「運、と言ってしまえばそれまでですけど。
でも案外そんなものでしょう」
自殺はともかくとして、誰もその直前まで自分が
死ぬなんて思わない。
その無念か、最期に出会う人間だからか―――
『ああ、会いに来たな』と感じる事はあるの
だという。
「ハッキリ見える……というか、気配というか
イメージでわかるんです。
それで、『ああ、この人は俺が運んだ人だな』
って」
ただ、共通した特徴というのはあるらしい。
それは―――
「よく、腐った状態とか頭が割れているとか、
女性でそういう方はいませんでしたね。
出る時は、すごく綺麗な姿で出てきます」
それは少女であろうが老婆であろうが関係なく、
どんな姿で死んだとしても、おそらく生前で
一番綺麗であろう時の姿を見せるという。
「死んだ時そのままの姿で出てくるのは、
男が多い気がします。
無頓着というか、そういう事なんですかねえ」
そう言うと彼は、何とも言えない表情で笑った。
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