89「宿泊」
・現代怪談話・伝聞
とある旅行会社に勤める女性から聞いた話。
「よく満室で泊まれない、という話が
ありますけど……
ホテルや旅館は絶対に空いている部屋が
数部屋あるんですよ」
ツアーコンダクターとして勤続年数10年になる
彼女は、淡々と語り始めた。
「意地悪とかそういうわけではなく、
メンテナンスや機器の入れ替えテスト用、
そういう事のために取ってあるんです」
新型のモニターや施設独特のサービス品、
変わったところだと簡易マッサージ器など、
備え付けにして様子を見るために置く。
「で、たいていそういうので『実験』
されるのは、私のような添乗員とかです。
こちらは『お客様』じゃないんで……
まあ部屋が用意されているだけでも御の字、
という施設もありますから」
実際、こういう場合はまだマシで、酷い場所だと
物置部屋みたいなところを充てられてしまう事も
あるという。
そして施設側としても空き部屋をなるべく
有効活用したい―――
という条件下で、彼女のような役職にその
お鉢が回ってくるのだ。
「ある時、そういう『モデルルーム』みたいな
部屋に泊まらされた時がありましたけど」
部屋の内装などは綺麗なのだが、どことなく
落ち着かず……
眠っても疲れが取れず、たった一泊しただけ
なのに心身ともにダウナーになってしまった
という。
そこは別にいわく付きの話も聞いた事が無いし、
ただ気になって写メを取り、記録しておいた。
その後、とある風水の専門家にそれを見てもらう
機会があったのだが、
「とんでもない配置だと言われました。
特にベッドが最悪で、悪いものを一極集中して
呼び込むような、そんな感じになっていたと」
素人が適当にやったのだろうけど―――
出来るなら止めた方がいい、ゆっくりと
リラックス出来るような部屋じゃないと
言われてしまった。
「でも自分ではどうにも出来ないですし……
それにそのホテル、外国人のバックパッカーや
短期滞在向け―――
いわゆる格安施設に切り替えたんです」
するとその路線が時代のニーズに合ったのか、
それなりに繁盛するようになったという。
「もしかしたら、ですけど……
回転率を上げるために、超短期滞在型の
施設にしたかった、とか?
それならあの風水の人の話も納得出来るん
ですよねえ」
そう言いながら彼女は苦笑した。
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