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百怪  作者: アンミン
怪異
274/300

74「吸う」

・素材について


お寺で修行している知り合いの話。


時代が進むにつれ―――

仏壇や祭壇、催事に使う道具などに、

昔ながらの木製ではなく……

合成素材やプラスチックを扱う物も出て来た。


「何か有難みというか……

 これで大丈夫か? という感じは

 しますよね」


知り合いがその事について同僚たちと

雑談していると、


「そもそもお釈迦しゃか様は、そういう事自体

 禁じているんだがなあ」


と、師が入ってくると同時に―――

素材うんぬんではなく、本来ならそういうものが

不要、というのが仏教の教えなのだという。


「死んだら焼いて川に流す。

 戒名だって仏門に入った時にもらう名前だ。


 お釈迦様の骨は取り合いで争いになったので、

 死ぬ時は空中で爆発した弟子もいるし」


要は道具の素材うんぬんではなく、

そういうものすら不要である……

というのが仏教の教えだと師は説く。


「じゃあ特に素材の違いについては、意味すら

 無いという事ですか」


彼が聞き返すと、師は首を左右に振って、


「物による」


と即答して来た。


さっきまで素材がどうという話ではない、

という事を言っていたのに―――

と弟子たちはいぶかしんだが、


「例えばコレだ。


 本来なら全て口伝くでんで伝える教えに

 なっているから……

 これもイレギュラーっちゃそうなんだが」


そう言って師が見せてきたのは経文で、


「こういうのは全部和紙で出来ている。


 神道も、お札やお守りの中身―――

 何か紙に書く時は全部和紙にしているはずだ」


「効果が違うんですか?」


同僚の一人がたずねると、

師は両腕組んでうなり、


「一度専門の職人に聞いた事があるんだが、

 『吸う』んだと」


「吸う?」


弟子たちが首を傾げて聞き返す。


「和紙というのは他の紙と異なり―――

 管理さえ良ければ何百年と保存出来る。


 そして書いた言葉の意味や絵についても、

 その意味に沿って『吸って』いくんだそうだ」


だから取り扱う際、和紙を扱っている物は

特に慎重になるそうで、


それが古いものだと……

さらに神経を使うらしい。


「まあだからある意味、今のコピー用紙みたいな

 物で作られたのは有り難いって言っていた。


 何か入っていたとしても素材が脆弱ぜいじゃくだから、

 どうとでもなるってよ」


そこにいた弟子たちは『入っていた』のは

何だろうと疑問に思ったが―――

誰もそれを口にはしなかったという。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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【ゲーセンダンジョン繁盛記】

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