68「遮断」
・感覚を閉ざすという事について
お寺で修行している知り合いの話。
『ひとりかくれんぼ』というオカルトチックな
遊びがある。
一時期、心霊系を追い求める人々の間で
流行ったもので、
やり方は省略するが、大まかにいえば用意した
ぬいぐるみと真っ暗な家の中で、疑似的な
かくれんぼをする事である。
実際にそれを行い、怪奇現象が起きたという
話は枚挙にいとまが無く―――
『交霊術なのか?』『ぬいぐるみに何か憑依
させているのか?』等、彼は同僚と意見を
交わしていたが、
「暗闇の中を、なあ」
と、彼らの師が話しながら入って来た。
同僚たちは彼を一緒に、師の話の続きを
待っていたが、
「しかし、うまいやり方だな。
『かくれんぼ』といえばどこかに
閉じこもるのも当然だし―――
密室か狭いところに潜むのが当然だ」
「どういう事ですか?」
彼が聞き返すと、師匠は説明し始めた。
「仏教の修行の中に、『胎内めぐり』、
『戒壇めぐり』と呼ばれるものがある。
これは本来、音や光を遮断する中を
歩く事で……
雑念を離れ、己自身と向き合う―――
という意味合いのものだが」
ただ本来、感覚を閉ざす修行というものは
危険なもので、
『胎内めぐり』『戒壇めぐり』も、
壁や手すりを手探りで探し、触りながら
歩く事は認められている。
しかし、ひとりかくれんぼの場合……
ただひたすら見つからないよう、一定時間
隠れている必要があり、
自然と『感覚遮断』の中に身を置いてしまって
いるという。
「拷問の一種でも、感覚遮断って使われるしな。
幻聴や幻覚を誘発するんだそうだ。
それをかくれんぼって理由付けして、自ら
その状況にもっていかせる……
もし意図的にそれをやらせるためだとしたら、
これを考えたヤツは相当頭がいいよ」
何のためにそんな仕掛けを?
と同僚の一人が質問したが、
「さてなあ。
実験か愉快犯か―――
どちらにしろ自分の選択でやる事だし、
乗っかる方もどうかと思うがね」
そこで師はいったん間を置いてから、
「何なら寺でやってみるか?
ウチ、隠れる場所ならたくさんあるぞ?」
その提案に、知り合いと同僚は全員
首を横に振ったという。
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